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HOME > コラム > 中国律師(弁護士)が見た日系企業 > 「桜木琢磨氏が覚醒剤密輸の嫌疑を受けている案件について」

中国関連コラム 中国律師(弁護士)が見た日系企業
陳

2014/12/12

桜木琢磨氏が覚醒剤密輸の嫌疑を受けている案件について

陳偉雄

一、案件の背景

1992年、本件の被告人である桜木琢磨氏は招待を受けナイジェリアに行き、投資を行い、国際的に有名な「419」詐欺に遭い、1993年までに計20万ドル余りの保証金を騙し取られました。2009年、ナイジェリア人のA氏は自発的に桜木氏と連絡を取り、損をした投資金の回収を手助けすると持ちかけました。この時点までで20年余りの利子、インフレーション等の要素の影響を受け、その債務は既に70.1万ドルに達していました。2013年10月、A氏は桜木氏にメールでナイジェリアの高等裁判所が発行したという判決書及び国連の関連組織が発行した証明文書を送信し、長年にわたる回収が成果を上げ、提示された文書にサインをすれば損をした投資金を回収できると言いました。2013年10月29日、桜木氏はA氏の誘いを受けて文書にサインするために中国広州市を訪れました。30日、桜木氏は公的文書に署名後、ついでの人助けとして日本で商売をしているスリッパのサンプルをA氏の妻に届けることを承諾しました。31日午前、広州空港税関で、桜木氏がA氏に代わって運んだスーツケース内から3289キロの白い結晶体が発見され、メタンフェタミンの成分が検出され、同日桜木氏は拘束されました。

2014年8月26、27、28日に、広州市中級人民法院は3日間連続で本件を審理しました。


二、公訴人の意見

桜木琢磨氏は騙されて覚醒剤を運搬したのであり、広州に来た本当の目的は単に文書に署名し、20余年の損をした投資金を回収するためであるという事実に対し、公訴人は異議を提起しました。公訴人は桜木氏が自ら運んだスーツケースに覚醒剤が入っていた事実について主観的に明らかに知っていたと考えています。公訴人は桜木氏の今回の広州行きには多くの疑問点があり、20余年の債務を回収するためという目的もまた他人を納得させるには至らない、と指摘しました。


三、弁護人の意見

弁護人は案件の情況に対して詳細に分析を行い、桜木琢磨氏には法律に規定されている「明らかに知っていた」と認定できる如何なる情状も備えていないと考えます。まず、桜木氏は正常な手続に従い自身の真実の身分をもって通関しています。空港で税関の法執行者が検査を行う時、桜木氏は非常に協力的で、振る舞いも自然であり、如何なる隠蔽、逃避或いは検査の拒否等の行為もなく、荷物の入手先・届け先についてもありのままに説明していました。次に、押収された覚醒剤がスリッパの靴底とスーツケースの二重底に隠されていたのは確かに隠蔽ですが、覚醒剤の隠匿行為全般においては桜木氏が実施したのではなく、スーツケースが渡されたとき、その隠匿行為は既に完了しており、彼はその情況をまったく知りませんでした。最後に、桜木氏は本件において如何なる経済利益も獲得しておらず、更に広州における食事と宿泊は全て実費で負担しており、これは薬物運搬罪による高報酬という特徴にまったく合致しません。


四、法廷尋問での焦点と弁護の困難な点についての分析

公訴人の疑問を通じ、本稿の執筆者である当方は公訴人が桜木琢磨氏の主観的な犯行の意思を認定する時、「被告人の年齢、経験・見聞、知力等の状況に鑑み、総合的に分析、判断」していないことを発見しました。公訴人の疑問は一見したところ社会通念、一般的な社会経験等の面から桜木氏の主観的な認知における信用できない箇所を分析したかのように見えますが、これらのいわゆる「社会通念」、「社会経験」はどれも中国的な社会経験であり、具体的に1人の日本人の高齢者が日本の社会環境の中で70年余り生活して蓄積してきたことが一体どのような経験・見聞及び生活経験であるのかについて具体的に分析されていない、ということを否定することはできません。裁判官が本件を審理するときに、如何にして中国的な社会経験で日本人の高齢者の主観的認知を判断させないようにするかが、弁護人が本件において最も難しいと感じたところであり、また最も肝心なところでもあります。

それから、弁護人が指摘しなければならないこととして、被告人が死刑判決を下される可能性のある国際的な薬物運搬案件において、被告人が有罪であるかどうかを認定する唯一の根拠は主観的にそれが薬物であることを「明らかに知っていた」かどうかという点のみであり、弁護人は長年にわたる債務取立ての証憑と今回広州に来る前のA氏とのメール、奥さんとの携帯メールの記録等の証拠を提供し、桜木氏が広州に来た目的は文書に署名し、損をした投資金を回収することのみであり、荷物に覚醒剤があったのは完全に他人に騙され、利用されたからであることを証明しました。


五、根拠とする主な法律規定

最高人民法院が印刷・公布した「全国の一部法院による薬物犯罪案件の審理業務の座談会紀要」第十点の中の、薬物犯罪での主観的に明らかに知っていたことの認定に関する解釈によりますと、薬物犯罪において、被告人が案件にかかる薬物を明らかに知っていたかどうかを判断する時、被告人の供述のみを根拠にすることはできず、被告人が薬物犯罪行為を行なった時の実施過程、方法、薬物が発見された情状等の証拠に基づき、被告人の年齢、経験・見聞、知力等の情況に鑑み、総合的に分析、判断しなければなりません。


六、まとめ

ある学者は「いわゆる人文精神は外来語であり、それ自身には厳格な定義がなく、ひとまずそれを人への配慮と仮定することができる。」と考えています。人間本位の価値判断と道徳心は既に法律の実践過程において欠かすことのできない一部分となっています。単調で味気ない法律条文のみに頼っていては豊富で多彩な人間性を合理的に説明することはできず、また人の個性は抽象化、定量化することができないため、人の個性や人道的な要求等の面から法律を履行しなければなりません。


(2014年12月執筆)

執筆者プロフィール

陳偉雄 (chen wei xiong )

広東広信君達法律事務所
パートナー弁護士、日系企業部主管

(略歴)
 中国広東省広州市生まれ。1990年中山大学法学部卒、広州市司法局での勤務を経て日本へ留学。2001年に成城大学法学研究科で博士号(民法)を取得するまでの9年間を日本で過ごし、2001年4月帰国、2016年3月日本国外国法弁護士資格取得。現在は地元広州において主に中国に進出中の日系企業に対して日本語で法律サービスを提供している。民商法、会社法、国際投資、国際貿易、知的財産権、労働争議の処理等を専門とし、民法(特に契約法)関連を得意分野とする。

(日本語による主な法律セミナー講演歴)
2002年7月、9月 東莞にて「中国における法律的見地から見た労務管理について」セミナー講演。

2003年7月 広州にて、日中法務交流・協力日本機構との合同法律セミナー講演。法円坂法律事務所の稲田弁護士と共に「債権回収とその実務」について講演を行う。

2003年9月 深センにて「外国企業が中国で投資を行う場合の法律形式」セミナー講演。

2003年9月 東莞にて「労働争議、最近の法改正について」セミナー講演。

2003年12月 中山市工商会にて「債権管理及び債権回収について」セミナー講演。

2004年6月 広州にて、UFJ総研(上海)有限公司主催の第一回「華南日本人総経理塾」で中国法律について講演。

2004年9月24日 広州にて、ジェトロ広州主催の第一回進出企業支援セミナーで「中国における契約締結に関しての注意事項」について講演。

2004年12月8日 東莞長安鎮日商企業連絡事務所例会セミナーにて、「中国における労務管理について」講演。

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