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中国関連コラム 中国律師(弁護士)が見た日系企業
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2008/04/16
中国労働関係新法に関する雑談
劉同強
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3月の始め北京で開催された第11期の中国全国人民代表大会では、「民生の改善と社会の調和」の促進は依然として重要なテーマとされている。「民生の改善と社会の調和」を促進するために不可欠な一環としての労働関係の最新立法内容について、若干の感想を述べさせていただく。
1、「労働契約法」の無期限労働契約の問題
「労働契約法」第14条に規定されている無期限労働契約(中国語の意味は「固定期限のない労働契約」である)の条件について、幾つかの争点がある。
「労働契約法」第14条の内容は以下の通りである。
第14条 固定期限のない労働契約とは使用者と労働者が契約の終了時期を約定していない労働契約をいう。
使用者と労働者が協議により合意に達すれば固定期限のない労働契約を締結できる。下記のいずれかの状況に該当する場合、労働者が労働契約の継続を申し出た場合には固定期限のない労働契約を締結しなければならない。
(1)労働契約更新時に、労働者がすでに当該使用者において連続して満10年以上勤務している
場合。
(2)使用者が労働契約制度を初めて実行するか、または国有企業が制度改革後に新たな労働契約
を締結するときに、労働者が当該使用者において連続して満10年以上勤務している、かつ法定
の退職年齢まで10年未満の場合。
(3)固定期限付きの労働契約を連続して2回締結したのちにさらに更新する場合、但し、労働者
は39条と40条1項、2項の状況のない場合。
使用者は労働者を雇用してから1年を経って、書面労働契約を締結しない場合、固定期限のない労働契約を締結したとみなす。
争点の一つ目は、第1項の連続で10年間勤務した場合、当然に無期限労働契約になるかどうかの問題。
元の労働法によると、連続で10年間勤務しても、雇用者の同意がなければ、無期限労働契約は成り立たないが、労働契約法を実施してから、雇用者の意思と関係なく、当然に無期限労働契約になるのは一般的な理解である。
このような解釈によると、例え2006年12月まですでに8年間勤務した労働者と3年間の労働契約を締結した場合、2009年の12月に労働契約の期限が満了するとはいえ、この労働者がすでに10年間以上勤務したため、労働契約の継続を申し出た場合には雇用者の意思と関係なく無期限労働契約を締結しなければならない。しかし、2006年労働契約更新の時点で3年間だけの雇用をめどにした雇用者にとっては合理性の欠くものになるだろうと思う。
これは、労働契約期限満了時点の際に、元の労働法を適用して調整するかあるいは労働契約法を適用して調整するかにかかわってくると思われるが、法律を実行する前の当事者の契約意思を完全に無視してもよいのかと思われる。
もう一つの争点は、第3項の解釈である。
雇用者は労働者と2回連続で労働契約更新さえすれば3回目の労働契約は無固定期限労働契約でなければならないか(通説)、あるいは雇用者は第3回目の労働契約締結に対して拒絶できるかである。
実務において、2回目の労働契約更新の場合、やはり労働契約期限が規定されていると思われる。通説のような理解によると、2回目の更新をした労働契約期が満了した場合、会社側は労働契約を終止することができなくなるわけである。これにより、当事者の間に労働契約期限という条目を約定する意味は全くなくなる。要するに、労働者は30日の申請時間をもっていれば、いつでも解約できるのに対して、雇用者は締結した契約を1回さえ更新すれば、契約期限が満了しても労働契約を終止することができないのである。
労働関係の安定化の立法目的はよく理解できるが、契約を2回連続締結(つまり1回の更新)すれば無期限労働契約にするのは、やりすぎのような気がしている。
以上のような問題になるのは、法律条文の意味の不明確さから出た問題である。通説の場合、法律条文において、10年間の勤務者に対して自動的に無期限労働契約になる、あるいは労働契約を1回さえ更新すれば自動的に無期限労働契約になるという文章にすればよいのに、このような問題になるのは、立法技術の問題であるか、中国の言葉の表現力の問題であるかのように思われるが、なかなか納得できないところである。
2、労働契約の解除と終止
元の労働法において、労働契約の終止条件は当事者によって約定できるが、労働契約法では、この内容が削除され、法律上明確に規定されている条件(第39条の労働者過失による解約、第40条の労働者の傷病と不適任、客観状況の変化、第41条のリストラの規定)以外には、労働契約の解除及び終止はできなくなったわけである。
元の労働法によると、労働契約の期限満了の場合経済補償金(退職金のようなもので、勤務年限に応じて、1年につき1か月分の給与を補償金として支給するもの)を支払わなくてもよいという規定があったが、今回の労働契約法では、雇用者の経済補償金支払義務を拡大し、労働契約期限満了後、労働者に元の契約条件を維持又は引き上げて継続雇用することが拒絶された場合以外に、雇用者は労働者に経済補償金を支払わなければならない。
以上に説明したように、労働契約の解除及び終止は難しくなった一方で、法定条件に満たせず解約あるいは契約終止した場合は、労働契約法第87条に規定されたように、2倍の経済補償金に相当する賠償金を支払う必要がある。要するに、雇用者はどうしても契約を解除あるいは終止しようとした場合、最悪で2倍の経済補償金を支払えば労働契約関係を終止できるのである。
この2倍の経済補償金に相当する賠償金の中に、契約期限終了時点で雇用者がどうしても負担すべき一つ分の経済補償金が含まれているため、結果的に、経済の面から見ると、労働契約の違法解除と終止は、もう一つ分の経済補償金さえ支払えばよいということとなった。
これに関連して、法律に規定されている解約条件あるいはリストラの実施条件について、行政側の判断標準(要するに、簡単に解約あるいはリストラできるかどうか)の問題も出てくるわけである。余りにも労働者の保護を重視し、公平正義に違反する場合、将来司法による是正も考えられるだろうと思われる。
3、農民工の問題
「農民工」という言葉は、法律用語ではないが、国家の正式文書の中にもよく使われているものである。法律上の定義は、戸籍は農民である労働者であると思われる。
現実には、「合同工」と「正式工」、「臨時工」、「労務工」の言い方もあるが、いずれも法律用語ではない。
「正式工」とは、元の国有企業(当時国営企業という)に正式に採用される従業員で、基本的に終身雇用の「鉄飯碗」(食いはぐれのない職業)とも言われる雇用形式である。これに対して、20世紀80年代中期から労働契約制度を導入され、正式に採用されていない従業員は、終身雇用ではなく、一定期間内の雇用しかないため、「合同工」といわれている。
「臨時工」とは、臨時的に使っている従業員である。
「労務工」とは、社会保険を納めない従業員の呼び方となっているが、ほとんど「農民工」と「臨時工」を指している。
労働契約法においても、「正式工」、「合同工」、「臨時工」、「労務工」、「農民工」の概念を使っておらず、労働者と一律にしている。ということで、「農民工」を一般労働者として調整しているわけである。
ただし、「農民工」の問題は戸籍の改革だけ関わっているわけではなく、これらの人の社会保険の納付問題も大きな課題として残っている。労働契約法では、雇用者と労働者両方とも社会保険に加入する義務を規定しているが、現時点で全国統一(通用)の社会保険(年金)口座がないため、ある都市で収めた社会保険料金は、この都市から離れると自分が使えなくなるため、出稼ぎの農民工にとっては、納付の意味がなくなるわけである。
同時に、社会保険料金を納めると、出稼ぎの人にとって、毎月手取りの給料金額が少なくなるため、収めたくないこととなる。
大連市では、戸籍は大連市ではない農民工の場合、労災と医療保険だけを収めればよいという規定が2006年に制定し、今現在も実行している。
全国通用の社会保険口座制度を制定しないのに、一方的に農民工及び雇用者に社会保険の納付を勧めていくのは、実務上無理だろうと思われる。
4、労務派遣会社
(1)労務工を派遣する派遣会社
労務派遣の会社は数多く設立されている、その目的は労働者の社会保険費用を納めずに労働者を使うこと。つまりコスト削減。雇用者側は給料及び手数料を払えば、社会保険の分は一切負担しないこととなる。労務派遣会社側も手数料をもらって、労務工の保険を納めていない現状である。今回の労働契約法の実施によって、このような労務派遣会社は閉鎖されるだろうと思われる。
(2)人材を派遣する外資企業服務会社
外国企業の事務所は国の法律に従い、許可を得て、登録の手続きを行ってから設立されているものであるが、中国現行法律によると、直接労働者を雇用できないのである。これは納得しにくいところの一つである。
外国企業事務所の労働者は、外資企業服務会社という元々政府系の労務派遣会社から派遣してもらう形をとっている。この外資企業服務会社は募集手続き(契約書類の準備)だけを行い、手数料を取っているが、従業員の採用、教育、管理などは一切行っていないのが現実である。
労働契約法に規定されている労務派遣は、この外国企業の事務所の労務派遣形式に当たると解釈されているが、当該法律第66条の労務派遣の実施範囲は臨時性、補助性、代替性という規定に違反している。要するに、労務派遣の臨時性については、全人代の法律委員会の専門家の解釈により、6ヶ月以内という意見に対して、外国企業の事務所の従業員は、みんな少なくとも1年以上の勤務になっているからである。
同時に、同法第58条には、派遣会社は従業員と少なくとも2年間以上の契約を締結するという規定があるため、実務中、外国企業の事務所は外資企業服務会社から2年間以上の従業員派遣契約書の締結が強制されている。
結局、法律に基づき許可、登録された外国企業の事務所は直接従業員を雇用できなく、そして派遣従業員を使用する場合の法律上の矛盾、派遣会社からの締約強制に直面しているのは、もう一つの納得しにくいところであろう。
尚、この労務派遣においても、2回連続の契約更新により、無期限契約になるという解釈が出ているようで、外国企業事務所の労働者採用は一層難しくなるだろう。
5、実施細則の件
労働契約法を公布した2007年6月末の時点でも、当該法律の適用に関する細則は2007年の10月に出ると政府関係者が言っていたが、結局その細則はなかなかできておらず、労働契約法を施行した2008年1月1日の時点に出るか、3月に出るかという噂が流れているだけになって、今でもまったくめどが立っていない状況である。
こういう問題は、法律実施に関する各政府部門の調整もあると思われるが、できないことは事前に発表しなければよいのに、政府に対する不信感が出てくるのではないか。
6、従業員有給休暇条例の解釈について
前回のコラムに紹介されている「従業員年次有給休暇条例」第2条の「連続勤務1年以上」の意味に対して、2007年12月末国務院法制弁公室労働司の司長が中国政府ネットのインタビューにおいて、こちらの連続勤務期間とは、就職開始から計算して、同じ使用者であるかどうかを問わなく、中断した場合でも実際の勤務時間を累積して計算し、満1年であれば、有給休暇を享受する、という意見があった。
その説明によると、当初の法律案の意見徴収の際に、「同一使用者での連続勤務1年以上」という内容であった。これに対して、かなりの意見(同じ使用者での制限はいらないこと、労働法45条には同一使用者の言い方もしていないこと)が殺到しているため、これらの意見を受け入れて、実際採決された「条例」には同一使用者での制限が取り消されたわけである。
このような解釈そのものは法律理論に従う立法主旨ではなく、民衆の意見だけを大事にする立法手法ではないかと思われる。この発言は今現在の政府意見を代表しているが、それに対する反論も強く想定されている。ということで、この意見の内容は将来の政府の正式文書での解釈あるいは司法解釈によって変わる可能性もないわけではないだろう。
(2008年3月執筆)
執筆者プロフィール
劉同強 (リュウドウキョウ)
履歴と学歴
1971年 吉林省延辺生まれ
1993年 中国弁護士資格統一試験合格
1994年7月 中国吉林師範学院(現北華大学)政治学部卒業(教育学学士)
1996年7月 中国吉林大学法学院経済法双学士班卒業(経済法学士)
1996年8月 大連鉄道運輸検察院勤務
1998年5月 遼寧(大連)同人弁護士事務所入所
1999年4月 富山大学留学
2000年12月 日本語能力試験1級合格
2001年12月 東京商工会議所ビジネス実務法務検定2級合格
2002年3月 富山大学大学院経済学研究科企業経営専攻卒業(経営学修士)
2002年4月 帰国、遼寧同人弁護士の専業弁護士として、渉日投資、貿易等のトラブル解決と日系企
業日常法務管理を担当。
2007年3月 遼寧ジャスフ(元は天巍)弁護士事務所のパートナーとして入所、事務所管理の一部を
担当しながら、引き続けて渉日投資、貿易等のトラブル解決と日系企業日常法務管理の
分野を担当。
所属事務所 遼寧ジャスフ弁護士事務所
2002年創立した遼寧天巍弁護士事務所により変名されたもので、11名の弁護士が在籍、国内外の投資、建築、金融、不動産、会社法務、知的財産権の保護、渉外取引及び通常の民事、刑事事件の訴訟と非訟業務を中心に、幅広い事案を取り扱っています。
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