2008年1月1日より実施された『労働契約法』は、言うまでもなく中国労使関係史において、極めて大きな意義を持つ法律です。本稿では、新法実施後の在華日系企業の具体的な対応についてご紹介したいと思います。
新華社通信のニュースによりますと、最近中国の南北部では、外資企業が中国市場から撤退する傾向があり、北部では、103社の韓国企業が大量の労働者を顧みずに山東省から突然撤退しました。撤退の原因は、中国政府が税収政策を変更し、また汚染に対する規制を厳しくコントロールし、更に『労働契約法』が実施されたことで、在華韓国企業の労働コストが50%も上がったことにあります。また南部では、『労働契約法』の実施と同時に企業が破産、あるいは外地に撤退する傾向が、春節前後にピークを迎えました。これらの企業は江西、湖南、広西等の地方やベトナム、タイ等の国外へ移動しています。
ある専門家の分析では、企業は『労働契約法』の実施前から合法的に雇用のリスクを回避し始め、ある企業は『労働契約法』の実施が労働コストを上げたとの理由で、製品の値上げを行ないました。新法の実施は、これまで安い人件費に頼っていた外資企業に強い打撃を与えました。しかし実際には、新法の実施により増加したコストは、本来企業が負担すべきコストであるのです。企業が新法の関連規定を尊重する場合、企業が負担すべきコストはごく限られたものとなります。但し、新法の規制の下、企業が労働利益を尊重しなければ、法律を守らなければ、労働者は企業に対し、巨額の賠償を請求することができます。それでも、先進国の法律制度と比べますと、中国の『労働契約法』は労働者の保護についてやはり保守的であると言えます。新法によって企業のコストが増加したというよりは、むしろ長い間、外資企業は中国が労働者の保護について曖昧にしている状況に慣れていた、と言ったほうが良いかもしれません。
現在『労働契約法』が実施されましたが、中国政府はまだその『実施細則』を公布しておらず、一部の日本企業は労働者が『労働契約法』の曖昧な司法解釈を利用して、企業に巨額の賠償を請求することを懸念していますが、多くの日本企業は高い順法意識を持ち、比較的合法的な経営管理を行なっているため、懸念するほど大きな影響は受けないと思われます。
日本企業の理念と言えば、「人材を中心」とする意識のほかに、法治観念、法治意識が一番重要な内容だと思います。違法行為を避けるため、また過度の待遇条件の提供を避けるためにも、『労働契約法』を基本として、各地の社会保険制度の具体的な内容と労働安全、労働災害、職業病の認定基準等を把握しなければなりません。順法意識の高さから、中国の日本企業は『労働契約法』の実施をきっかけに各方面の調整を開始しており、例えば、労働者が正しく労働契約法を理解するよう育成したり、企業と個人の利益をもっとも密接に結びつけていくよう育成したり、また、労働者を解雇する際には十分な証拠を持つように、日常管理において労働者の規則違反や重大なミスがある場合には詳しく記録し、企業の挙証責任のコストを最小化するように努力しています。
日本と中国は共にアジア文化圏に属し、文化の根源は深く、考え方にも通じるところがあります。日本の企業文化の発展は、勉強、加工、確立の過程を経て、自身の伝統的なやり方と先進国の管理理念とを十分に結びつけ、優秀な企業理念を確立しました。日本の企業精神の分析により、いかにして中国の企業文化を確立するかを簡単に提言いたしますと、まずは、企業の法治観念を確立すること。いずれのことも、法治の観点から行ってはじめて法律保護を享受することができます。そして、「人材を中心」の企業精神を絆に企業文化を構築して、労働者と企業とのつながりを強くすること。そして、企業自身の特徴を活かして、市場経済と時代の特色に合う企業文化が確立されます。
『労働契約法』の実施により、日本企業が法律理念を把握し、今後の長期的かつ安定的な労使関係の樹立を志向するようになれば、むしろメリットのほうが大きいのではないかと思います。
(2008年5月執筆)