2008年5月9日、中国国務院法制弁公室は「中国労働契約法実施条例(草案)」(計45条)を発表し、社会に意見を求めています。ここで、この草案の要点を紹介してみようと思います。(以下敬称略)
第1章 総則
第1条は立法根拠。
第2条は政府、労働行政関係部門及び工会の宣伝教育義務、労働契約法の実施及び労働関係の調和の目的を達成する。
第3条、労働関係の概念を規定する条文で、(1)会社(雇用者の意味で使っている)の成員としての招聘、(2)会社管理の下で、(3)会社が報酬を支払う労務の提供という要点を強調している。
実務において、会社の日常の管理に置いていない自宅勤務の場合は労働関係の概念に入るかどうかなどの問題もあろうと思われるが、法律上の概念として規定する際に、要点を列挙するほかに、抽象概括の内容も入れるべきであろう。
第4条、会計士事務所、弁護士事務所、基金会は雇用者であると明確に規定されている。弁護士事務所でも事務担当の方を招聘しているので、雇用者であることは間違いないが、弁護士も労働者として労働契約を締結するように理解されている。
「中国弁護士法」では、弁護士事務所は弁護士の業務実行組織として規定されているが、双方間労働関係であることまで言及していなかった。実務において、弁護士の業務内容、勤務時間、所得体制、実習弁護士の立場などの面で特殊点があるため、事務所と弁護士との間は労働関係ではないという認識を持っている弁護士のほうが多く存在している。
第2章 労働契約の締結と履行
第5条は、労働者を実際に使用する前に解約した場合、会社側は民事上の違約責任を負うだけで済むが、労働法上の医療待遇、経済補償金問題が発生しないことである。
第6条及び第7条では、労働者の原因で1ヶ月以内に書面契約を締結していない場合、会社側は3日前に書面の通知で労働関係を終止することができ、かつ経済補償を負担しなくてもよいが、1ヶ月を超えた場合、労働者の原因にもかかわらず、会社側は法律に従い2倍の給料を支払うだけではなく、労働関係を終止する場合、経済補償金を支払う必要もある。
これによって、労働者の原因で労働契約を締結していなかったという雇用者からの理由主張は出来なくなって、雇用者の労働契約締結義務がさらに強調された。
第8条は従業員名簿の内容。
第9条、勤務期限10年間の起算点は実際使用日。
第10条、労働契約期限の計算点も実際使用日。
第11条は固定期限後の自動延長による無期限労働契約の締結。
第12条、法定された以下の三つの事情の一つによって、労働契約が延長され、延長期間中に10年になって、労働者が無期限労働契約を締結するよう要求した場合、会社側は締結しなければならないこと。
(1)職業病の危険を伴う業務に接して従事していた労働者が職場を離れる前に職業病の健康診断を行っていないか、または職業病の疑いのある労働者が診断を受けている途中あるいは医学的観察期間内である場合。
(2)病気または負傷により規定の医療期間内にある場合。
(3)女子の従業員が妊娠、出産、哺乳の期間内である場合。
この規定によって、無期限労働契約の締結条件が拡大され、雇用者は労働契約の期限管理において注意する必要があろう。
第13条は、契約解除あるいは満了して、会社側が法律に従い経済補償金を支払わなかった場合、労働契約が延長されたとみなされる。無期限労働契約の条件を満たす場合、無期限労働契約を締結する。
第14条、無期限労働契約を締結する時点で、契約期限以外の内容の約定は、公平合理の原則に基づき確定すると規定されている。
これによって、無期限労働契約を締結する場合、当事者双方は元の労働契約の内容を変更することができるが、その変更内容の妥当性は公平合理の原則で判断することとなった。結局、変更できるとしても、任意で変更できないわけである。
第15条は、公益職位の特別規定(無期限契約及び経済補償金は適用せず)。
第16条は、労働契約のその他の条文の説明(労働法19条の労働紀律、終止条件、違約責任が入っていないこと)。
第17条、労働契約履行地及び会社の登録地と違う場合、履行地の労働標準に従うが、登録地の標準が高い場合、双方の協商で登録地の標準に従うこともできる。
第18条、試用期限の給料を同様仕事内容の最低賃金の80%までとする。
この内容は労働契約法第20条の規定と矛盾しているという意見もある。要するに、労働契約法第20条では、試用期限中の給料は同様仕事内容の最低賃金あるいは労働契約に約定された給料の80%より下回ってはいけないと規定されているが、この80%の規定は「同様仕事内容の最低賃金」にも適用するかどうかという中国語文法上の異義があるからである。
第19条、労働者に対する専門訓練費用の条件は、会社前年度平均給料の30%以上を使ったことである。
30%未満の経費を使って労働者を研究、訓練させても、専門訓練費用として認めず、これによる服務期限の約束あるいは違約責任負担の規定もできなくなると思われる。
第20条は、服務期限による労働契約の延長の規定。
第21条、競業制限の対象は、財務責任者及び会社定款に規定された人も含む。
第22条は、秘密保持契約書にる契約終止あるいは解除前の業務内容変更可能。
第23条、契約期限満了後継続して使用する場合、改めて締約する必要がある。さもないと、契約が未締結として処理される。
雇用してから1ヶ月以内に契約未締結の場合、1年以内に給料2倍で計算し、1年になると無期限契約が締結したと見做され、同時に行政処罰の対象ともなる。
第24条は、協議一致、徴兵、人柄拘束、失踪などの場合によって労働契約は中止することができるが、中止期限は長くとも5年間とする。
第25条は、労働契約法第82条、雇用後1ヶ月以内1年未満労働契約未締結の場合2倍賃金の支払時期は、労働契約未締結当月満了後の翌日から計算する。
第26条、労働契約法に抵触した施行前の契約内容が2008年1月1日から無効とする。
第3章 労働契約の解除と終止
第27条は、試用期限中でも労働契約法第40条及び41条の解約内容が適用可能。
第28条は、無期限労働契約の法定解除条件(労働契約法第36、39、40、41条同)。
第29条は、労働契約終止条件(労働契約法第44条の一部)。
第30条は、1ヶ月前の解約通知の変わりに支払う1か月分の賃金の標準。
第31条は、一定業務の完成を期限とした契約の満了後も経済補償金を支給。
第32条は、労災にあった労働者の解約、終止の場合、医療補助金及び就職補助金を支給。
第33条、労働者が法定退職年齢になって基本養老保険待遇を享受できない場合、会社は労働契約を終止することができるが、労働者に経済補償金を支払うべきである。
現行法において、養老保険費用を15年間連続で納付していない場合、その待遇が享受できない。このような労働者の定年の場合、経済補償金の支給義務が発生する。
第34条、労働契約の解除、終止証明書には、勤務年限を書く必要がある。
第35条、会社側は法律に違反して解約あるいは契約終止し、労働契約第87条に規定された経済補償金2倍標準の賠償金を支払った場合、別途経済補償金を支払う必要がない。
これによって、経済補償金及び賠償金の関係が明確になったが、労働契約法第48条の規定により、2倍の賠償金の支給により労働契約を必ず終結することができるわけでもないため(労働者は継続履行を要求することが出来る)、注意する必要がある。
第37条、経済補償金の計算について、2008年1月1日以後の分は労働契約法の規定に従うが、その前の分はその当時発効している法律に従い計算すること。
第4章 労務派遣の特別規定
第38条、労務派遣の臨時性、補助性、代替性の解釈。
一般的に非主要営業業務の職務、使用時間を6ヶ月を越えない職務、あるいは元の労働者は研修、休暇によって一時的に勤務できなく、他人が代替する必要のある職務に使う。
同時に、労働派遣会社と労働者との契約書に試用期限の規定が禁止。
第39条、労務派遣会社はパートの雇用が禁止、パートとして派遣が可能。
第40条、受入会社の派遣労働者を返す条件(労働契約法第39条、40条1項と2項)。
第41条、労務派遣会社は労働者に対する法定経済補償金支給義務がある。
第42条、出資関係(組合関係も含む)のある労働派遣会社は労働契約法第67条に言う会社自ら設立する労働派遣会社とみなされる。要するに、このような会社の間に、労務派遣が出来ないこと。
第5章 附則
第43条は労働契約法あるいは本条例に違反する行為の告訴。
第44条は労働争議の仲裁審理。
第45条は条例の施行日(意見徴収中で、空白となっている)。
(2008年7月執筆)