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時事法律コラム
矢崎

2012/07/07

【企業法務】 疑わしきは企業の不利益?

矢崎信也

読売巨人軍のH監督が、女性問題に絡み、過去に元暴力団員に1億円を支払ったと週刊誌で報じられました。巨人軍及びH監督は、女性問題及び金銭の支払いについては事実を認めたものの、支払った相手が反社会的勢力であったことは否定し、出版社に対し、損害賠償請求を行う方針を示しています。

刑事裁判では、「疑わしきは被告人の利益に」といういわゆる利益原則が存在し、証拠に基づき合理的な疑いを差し挟む余地がない程度まで事実が証明できない以上は、被告人を有罪にしてはいけないこととなっています。

他方、一般の社会、特に企業のコンプライアンスに関しては、「疑わしきは企業の不利益に」とでもいうべき状況が現実であると言っていいと思われます。企業にとって、ひとたび不祥事が報道されると、そのイメージダウンは必至であり、場合によっては、企業存亡の危機に陥る可能性すらあります。

では、どうすれば不祥事もしくは不祥事と疑われる事実を防ぐことができるのでしょうか。各企業では、コンプライアンス体制の強化のために様々な制度が導入されていますが、最終的には企業の構成員一人一人がコンプライアンスの重要性を真に自覚すること以外に方法はありません。この点、法令遵守と言うと、難しいイメージで考えられがちですが、要は家族や友人等に胸を張って言えないようなことは行わないということではないかと思います。

翻って、H監督の例で言えば、まずは女性と関係を持ったことが家族等へ胸を張って言えないことは当然であり、そもそもの誤りであったといえます。読売巨人軍のスター選手という有名人である以上、個人のスキャンダルは球団のスキャンダルとして評価され得ることは、もっと強く意識すべきでした。百歩譲って、女性問題自体は個人の倫理・道義的な問題にすぎず、球団のコンプライアンスとは直接は関係しないと考えられるとしましょう。そうだとしても、かかる事実を隠すために要求に応じて金銭を支払う行為自体が社会的非難に値する行為、もしくはその疑いがある行為であると考えざるを得ません。とある証券会社では、反社会的勢力の定義の中に、暴力団のみならず、「・・・不当な要求行為等により市民社会の秩序や安全に驚異を及ぼす団体または個人等」を入れており、私もこれに賛成です。女性問題を題材にして金銭を要求してくる個人は、「反社会的勢力」に含まれる可能性があるのです。少なくとも、この金銭の支払いが胸を張って家族等に言えない行為であることは間違いないでしょう。H監督としては、この要求があった時点で、即時に警察に連絡したり、弁護士に相談するなど真っ直ぐな対応をとるべきであったと思われます。

なお、蛇足ながら、本件において、H監督は情報源を元球団代表のK氏であると断定し、「Kさんへ」という異例のメッセージを公開しています。私は、この点にも強い違和感を感じます。仮に情報漏洩がK氏の行為によるものであったとしても、その事実によって、H監督の行為が消える訳ではないからです。K氏が非難されるべきか否かとH監督が非難されるか否かとは別次元の問題です。前者によって、後者を稀釈することを企図して上記のメッセージを発したのだとすれば、それは問題のすり替えに過ぎません。

読売巨人軍を心から愛する一人の弁護士として、本件を機に同球団が真のコンプライアンス体制を構築し、子供たちに夢を与え続けることを願ってやみません。


(2012年7月執筆)

執筆者プロフィール

矢崎信也 (ヤザキノブヤ)

弁護士

(略歴)

昭和60年3月  駒場東邦高等学校卒業

平成2年3月   中央大学法学部卒業

平成6年4月   第48期司法修習生(札幌地方裁判所配属)

平成8年4月   弁護士登録(名古屋弁護士会 現愛知県弁護士会)

同年4月     加藤・村瀬合同法律事務所入所(同年6月に「村瀬鎮雄法律事務所」に名称変更)

平成11年11月 村瀬・矢崎綜合法律事務所開設

平成17年4月  中京大学法科大学院非常勤講師(平成21年3月まで)

平成19年10月 名古屋大学法学部非常勤講師(特別講義「企業法務」担当)

平成20年12月 愛知県弁護士会研修センター運営委員会法律研究部コンプライアンスチーム チーム長

平成24年4月  愛知県弁護士会副会長


(著書)

共著「類型別 契約審査手続マニュアル」(新日本法規出版 平成20年)

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