1 年の瀬も迫った2011年12月25日から急ぎの業務で北京市・天津市に出かけた。1年ぶりの北京だが慢性化した交通渋滞は変わらない。1週間をナンバープレートの偶数車と奇数車で自動車交通を制限しても改善はおぼつかない。ガイドも携帯電話のやり取りで、宴会場で待つ提携先に待ち合わせ時間を告げる。
2011年9月7日、中秋の名月の時期に大連市に行ったときも同様だったが、交通ラッシュはすざまじい。平日は朝夕の通勤ラッシュだけでなく、昼の時間も大連賓館前のロータリーは交通渋滞だ。
試しに大連では1元を払って二階建てバスに乗ったが、これも混み合っている。いまダイナマイトで地下の岩盤を破壊しつつ、突貫工事で2015年開業を目指す。地下鉄ができると庶民の足となるが、聞くところによると地下鉄工事で何人も作業員が死亡していると言う。法律事務所のある中山広場の工事現場もやっと地下鉄工事が終わり、ひどかった発破の衝撃と音も遠くから鳴り響いてくる。
2 歴史的な町並みを誇る大連の道路は車道だけでなく、歩道も広い。歩道に縦に駐車できるスペースがある。しかし、今すべての歩道は駐車場化している。個人が豊かになりマイカー通勤が当たり前の近代都市大連は、ローンで庶民が気楽に車を購入できる。
しかも、日本のように車庫証明がいらないので、車は売れ、ローン漬けの「車奴」という新しい言葉が生まれている。庶民は住宅を購入するも、財産形成のために2戸、3戸と金を貯めてマンションを買う。ローン漬けの債務者を「房奴」という。苦笑しながらついでに「車奴」か?と聞く、という。
中国の土地は国有地だ。当然、車道も歩道も国有地だ。大連の大通りはほとんどが駐車禁止で、車道に駐車すると、道路交通法違反で罰金が取られるので、庶民は歩道に乗り上げて駐車する。歩道なら駐車違反はなく、いまや歩道が駐車場と化している。歩車道を区別する路肩の段差を低く改造し、大連は北京・上海のような大都市同様に車優先の社会を作ってきた。
従って、歩行者はずらっと駐車した車両で歩道を歩けないため、やむなく車道に出て走る車の脇を歩行するという、矛盾した行動をとらざるを得ない。
大連市当局のいい分は中国的なブラックユーモアで、駐車場は増やせないし、止まった自動車は自由に変形させられない。しかし人間は車道でも自由に行動して車を避けるので、融通が利くとの交通ルールを曲げた判断だ。
3 提携先の天津第一中心病院の院長は1992年に日本に留学し、博士号も取得した臓器移植の専門家だ。彼曰く、大連と同様に天津市内には駐車場が少ない。市民が持つ車は80万台だが、駐車場は3万台しかなく、交通システムが間違っているという。
病院も同じだ。天津では多くの患者が並んでおり、医師は毎日忙しい。日本では病院管理を優秀な事務職がしているのを見るにつけ、中国では大病院の効率が悪い、という。まさに中国では自動車と同じく、「ハード」を増やすことが優先で、重傷の患者を速やかに治療する「ソフト」のシステム・制度が問題だという。中国は急ピッチの経済成長優先で交通・物流インフラは考慮外だったので、是非とも病院経営で日本のソフトパワーの質を学びたい、と熱心に語っていた。
もちろん、中国は日々経済が発展している。様々な中国人のノウハウも中国流だ。
例えば、大連の銀行窓口の一角に、人民弊の束を積み上げ、「公認(?)の闇両替商」が一人陣取っている。銀行の中なら警備員もおり、両替商も安心だ。客から外貨を正規為替レートの約2.5%高で両替する。客に渡す人民弊の現金は、銀行の窓口係が偽札か否か、検査して、両替商に帯封付きで渡す。客は両替屋から真札を受け取る。間違いがなく、かつ換金率が良いので留学生が外国に出発する時期には、おおいに賑わうと聞く。数百万円単位でも簡単に両替する。中国人でなく外国人でも買い物して余った人民弊を再度外貨に戻さないなら、銀行やホテルで両替しなくても不都合はない。日本人には理解できないが、きっと銀行にとっても「公認(?)の闇両替商」は多額の預金をする上得意客で、持ちつ持たれつの民間の知恵には感心する。
(2012年1月執筆)