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法案の解説と国会審議
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国際私法の現代化
−法の適用に関する通則法−
平成18年6月21日公布 法律第78号
著者:本多恵美
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法案提出の背景・経緯 外国人との結婚やインターネットを利用した個人輸入といった、何らかの国際的な要素を持つ法律関係については、紛争が起きたときに、どの国の法が適用されるのかが問題になる場合がある。このような場合にどの国の法が適用されるのか(準拠法)を決定する法律を国際私法といい、我が国の場合は主に「法例」という明治31年に施行された法律の第3条以降に定められていた。 法例は、婚姻や親子関係に関する規定について何度か改正されたものの、契約など財産法関係の規定については見直しが行われず、社会経済情勢等の変化に対応できていないとの指摘がなされていた。近年では、特に債権流動化の基盤整備推進という観点から、規制改革推進3か年計画、規制改革・民間開放推進3か年計画において国際私法規定の全般的見直しを求められてきた。 また、国際的な法制の調和が強く求められる分野であり、ヘーグ国際私法会議、国連、EUなどにおいて、国際私法に関連する統一的な基準を定める様々な条約が作成されている。こうした動きに合わせて国内の国際私法に関する法改正や新規立法を行う国も多い。 このような状況を踏まえ、平成15年2月5日、法務大臣が法制審議会に対し「国際私法に関する法例の規定の現代化を図る上で留意すべき事項につき、御意見を承りたい。」との諮問を行い、これを受けて法制審議会は国際私法(現代化関係)部会を設置した。 部会では、平成17年3月に「国際私法の現代化に関する要綱中間試案」を取りまとめてこれをパブリックコメントに付し、中間試案に寄せられた意見を踏まえて更に検討を行い、同年7月に「国際私法の現代化に関する要綱案」を決定した。 法制審議会は同年9月6日、「国際私法の現代化に関する要綱」を採択して法務大臣に答申し、この答申を受けて平成18年2月14日、「法の適用に関する通則法案」が国会に提出された。
法律案の概要 [国際私法に関する規定の整備] (1) 人の行為能力 人の行為能力は、その本国法によって定める。 (2) 法律行為の準拠法 <1> 法律行為の成立及び効力の準拠法
| ア | 法律行為の成立及び効力は、当事者が法律行為の当時に選択した地の法によるという現行の規律を維持するが、当事者による選択がないときは、一律に行為地法によるという現行の規律を改め、法律行為に最も密接な関係がある地の法によることとする。 | | イ | 法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法を、不動産を目的とする法律行為であるときはその不動産の所在地法を、それぞれ法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。 | | ウ | 当事者は、準拠法を変更することができるが、第三者の権利を害することとなるときは、その変更を第三者に対抗することができない。 | <2> 法律行為の方式の準拠法
| ア | 法律行為の方式は、法律行為の効力を定める法によるとする現行の規律を改め、法律行為の成立について定める法によるものとする。ただし、行為地法に適合する方式は、有効とする。 | | イ | 法を異にする地に在る者の間で締結される契約の方式について特則を設ける。 | <3> 消費者契約及び労働契約の特例
| ア | 消費者契約について、当事者の準拠法選択がある場合でも、消費者の常居所地法中の特定の強行規定による保護を優先させ、当事者の準拠法選択がない場合には、消費者の常居所地法を準拠法とする。ただし、消費者自らが外国へ赴いて契約を締結した場合等は除く。 | | イ | 労働契約について、当事者の準拠法選択がある場合でも、労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定による保護を優先させ、労働契約において労務を提供すべき地の法を最も密接な関係がある地の法と推定する。 | (3) 法定債権の成立及び効力の準拠法 <1> 事務管理及び不当利得
| | 事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法によるという現行の規律を維持するが、明らかにより密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。 | <2> 不法行為
| ア | 不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、一律に原因となる事実が発生した地の法によるという現行の規律を改め、加害行為の結果が発生した地の法によるものとするが、その地における結果発生が通常予見できないときは、加害行為が行われた地の法とする。 | | イ | 生産物責任については、被害者が生産物の引渡しを受けた地の法により、名誉・信用の毀損については、被害者の常居所地法による。 | | ウ | ア又はイで定まる準拠法よりも明らかに密接な関係がある地の法があるときは当該地の法による。 | (4) 債権の譲渡の債務者及びその他の第三者に対する効力の準拠法
| | 債権譲渡の債務者その他の第三者に対する効力は、債務者の住所地法によるという現行の規律を改め、譲渡の対象となる債権の準拠法による。 |
[表記の現代語化等] (1) 法律の表記を平仮名及び口語体に改め、用語を平易なものに改める。 (2) 法律の題名を、「法例」から「法の適用に関する通則法」に改める。
国会における論議 本法律案は、参議院先議で審議され、衆参両院本会議において、それぞれ全会一致をもって可決、成立した(平成18年4月19日)。国会における主な論議は次のとおりである。 〔法律の名称変更の理由・妥当性〕 名称を変更することとした理由としては、「一般にはなじみがないと考えられるので、これを国民に分かりやすい現代語に直して法の適用に関する通則法とした」という答弁があった。また、国際私法という名称を採用しなかった理由として、「現行法例第1条及び第2条の規定を除外することはできないが、これは国際私法とは関係ない」との答弁があった。 〔法律行為の成立及び効力に関する準拠法の改正〕 現行の法例第7条第2項では、当事者の合意がない場合は行為地法によるとされているところを、最密接関係地の法によると改めたのはなぜかとの問いに対し、「最近の状況では、電子取引等もあり、全く場所から切り離された形で契約が行われるということもあるので、行為地法主義を維持するのはもはや相当ではないということは、ほぼ関係者の共通の理解となっていった」との答弁があった。 〔消費者契約に関する特例〕 消費者保護の観点から、準拠法の選択がある場合でも消費者の常居所地法中の強行規定による保護を受けられるとの規定が設けられているが、これには消費者による主張が必要であり、法律に詳しくない消費者にとっては負担が過大ではないかとの質問に対し、「ヨーロッパの一部に自動的に強行規定として消費者を保護する規定が適用されるという法制もあるが、そのような法制を採用している国の実務は非常に煩瑣で、かえって裁判を長引かせ、妥当な結論に至るに時間が掛かり過ぎる、あるいは裁判官にとっても負担が非常に大きいということで、結果的に消費者のためにもならないという指摘が非常に強くされるに至っている」との答弁があった。 〔特別留保条項を維持する理由〕 不法行為の成立及び効力について一定範囲で法廷地法である日本法を累積適用する、いわゆる特別留保条項については、学説上、過度に内国法を優先していること等を理由に批判が強い一方で、パブリックコメントでは、実務的にも重要な規定であり維持することが望ましいとの意見も多数出されるなど、議論の分かれるところであった。これを維持することとした理由として、「特別留保条項は、基本的には不法行為に関する規範が公の秩序に関するものであることを理由にして設けられたものだが、現在においては、不法行為責任についての実務的な予見可能性を確保する観点からも重要な規定である」との答弁があった。
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