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HOME > ニュース&ダイジェスト 法令 > 法案の解説と国会審議 > 「住宅の量から質へ、住宅政策の転換」

法案の解説と国会審議

住宅の量から質へ、住宅政策の転換

−住生活基本法の成立−

平成18年6月8日公布 法律61号

著者:信国 隆裕

 住生活基本法案は、平成18年1月31日、第164回国会において衆議院に提出され、同年6月2日、参議院において可決・成立された。同法の制定を受け、国が策定する住生活基本計画(全国計画)が同年9月19日、閣議決定されている。今後、全国計画に則して、都道府県計画は、各都道府県により策定されることになる。
 本稿では、住生活基本法案に関して、参議院国土交通委員会における基本的な質疑について、その概要を紹介する。

本法案の趣旨
 我が国の住宅政策は、住宅建設計画法の下、公的資金による住宅の新規供給の支援を通じて戦後の住宅不足の解消や居住水準の向上に一定の役割を果たしてきた。しかし、近年の急速な社会経済情勢の変化に応じて、現在と将来における国民の豊かな住生活を実現するためには、住宅の量の確保を図る政策から、住宅ストックの質の向上を図る政策へと本格的な転換を図り、新たな住宅政策の基本となる制度を構築することが大きな課題となっているとの認識の下に提案された。
 同法案の概要は、<1>住生活の安定の確保と向上の促進に関する施策の推進についての基本理念を定め、国、地方公共団体及び住宅関連事業者の責務を明らかにすること、<2>国と地方公共団体が講ずべき住生活の安定の確保と向上の促進に関する基本的施策を定めること、<3>政府が定める全国計画と都道府県が定める都道府県計画からなる住生活基本計画を策定することとするとともに、この計画を実施するため、国、地方公共団体等が講ずべき措置について定めること、<4>住宅建設計画法を廃止することの4項目である。

参議院国土交通委員会における基本的な質疑
1 本法を提案した背景
 住宅政策の基本的な枠組みを定める法律として昭和41年に制定された住宅建設計画法があり、今回はこれを廃止して住生活基本法を制定することとなったが、その背景について問われた。
 戦後の住宅政策は、終戦直後の圧倒的な住宅不足に対応するために、基本的な政策手段が昭和20年代に相次いで整備された。昭和25年の住宅金融公庫、26年の公営住宅制度、昭和30年の大都市の住宅不足に対応するための日本住宅公団制度の創設である。しかし、昭和41年、高度成長、都市集中、大都市における住宅不足にどう対応するかということを問題意識として住宅建設計画法が制定され、同法に基づく5か年計画の策定と実施がなされた。40年代後半に住宅の量的な不足は解消され、同法に基づく第3期の5か年計画(昭和51年〜55年)から住宅の質的な向上について床面積の目標が定められることとされた。
 その後、社会経済情勢の変化に伴い、住宅政策は、量の確保から住環境を含めた質の向上へと転換され、特に、第8期住宅建設5か年計画(平成13〜16年度)において、同法による政策運用の枠組みを抜本的に変える方向で、5か年計画は第8期をもって終了するという考え方で問題状況の整理が行われ、平成15年に社会資本整備審議会から新しい住宅政策の方向について建議がなされた。
 さらに、住宅金融公庫、公営住宅、日本住宅公団の制度について、官から民へ、国から地方へという観点から、抜本的な見直しが行われ、同法に代わる新しい制度的枠組みとして住生活基本法案が提出されたものである。

2 基本法の提出時期について
 昭和40年に制定された住宅建設計画法から30年以上経過している。この間に、住宅宅地審議会は、基本法を制定すべきという答申を行っているにもかかわらず、今日まで基本法の提出が遅れた理由について質された。
 第3期住宅建設5か年計画において、公的資金による住宅建設の計画を骨格としつつ、住宅の質も追求するという観点から、5か年計画の範囲を超え、10年後の平均居住水準及び最低居住水準の目標を掲げ、長期的な目標を示して、必要な政策目標を達成するという新しい政策のニーズに応える形で運用することとされた。
 その後も、市場を前提にした政策運用を行うこととし、<1>平成8年公営住宅の供給方式の自由化の中で、借り上げ、買い上げの制度の導入、<2>マーケットの家賃を前提に応能応益の家賃制度の導入、<3>住宅の品質の確保の促進に関する法律、住宅性能表示の導入など、市場インフラの整備などがなされている。
 住宅基本法により居住に関する権利を法定すると、具体的かつ包括的な権利として法定することが国民の居住を向上させるための手段だと考えるのか、あるいは、具体的権利として法定するところまで国民のコンセンサスはないのではないかという議論が行われており、それを基本法のターゲットにする限り成案を得られないという時期が続いたため、内閣として基本法を制定することができなかったとしている。

3 今後の住宅政策の推進方針
 国土交通省は、住宅政策について、いわゆる公の立場からどのような方針で進めていくかについての所見が質された。
 法律成立後、全国計画と都道府県計画の二本立ての住生活基本計画が策定される。計画の中で、住生活の安定の確保及び向上のために具体的な目標が明確にされ、アウトカム目標という成果目標、例えば、耐震化率、バリアフリー化率、省エネ率、住宅性能の表示実施率等が示される。地域の特性に応じた具体的な成果目標が都道府県計画の中で明記され、それが実現されているか検証することなどを通じ、具体的な施策の推進が図られることとしている。

委員会における附帯決議
 本法案に関して、国土交通委員会は、6月1日、「少子高齢化時代に対応し得る住宅政策の確立のため、総合的な住宅政策体系の構築とともに、個々の施策の効果的かつ効率的な実施を通じて豊かな住生活が実現されるよう、関係機関は、最大限の努力を行うこと」など6項目の附帯決議を行っている。
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