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HOME > ニュース&ダイジェスト 法令 > 法案の解説と国会審議 > 「領海等における外国船舶の航行に関する法律」

法案の解説と国会審議

領海等における外国船舶の航行に関する法律

平成20年6月11日公布 法律第64号

著者:近藤 智哉

■法律案の提出と成立

2001年の米国同時多発テロを契機に、各国において海事分野のテロ対策の強化が図られている。我が国においても2004年4月に、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」が施行となり、外国から我が国の港に入港する一定の船舶に対し、船長に海上保安庁長官への通報義務を課すなどの安全対策が施されてきた。

一方、入港を必ずしも前提にしない我が国の領海における外国船舶の航行については、国連海洋法条約第17条により、無害通行権が認められ、沿岸国は、無害通航を妨害してはならないとされている。しかしながら、同条約では、外国船舶の領海内の通航は、継続的かつ迅速に行われなければならず、領海内での停船及び投錨は、一定の場合を除き通航とは認めないとしているにもかかわらず、我が国の場合、外国船舶がこれらの行動をすることを禁止する国内法規が未整備の状況であった。そのため、例えば、外国船舶が何らかの事情で自国の警備艇に追跡され、我が国の領海等に逃げ込み、はいかいした場合、明らかな犯罪行為が見られない限り、強制的な立入検査を実施することや領海外へ退去させることができず、十分な対応を採ることができないといった実態が指摘されてきた。

そうした中、2007年4月に海洋基本法が制定され、2008年3月に同法に基づき閣議決定された海洋基本計画では、「周辺海域における不審船、密輸・密航等の犯罪に関わる船舶の侵入や航行の秩序を損なう行為を防止するため、制度上の整備を検討し、適切な措置を講じる」こととされるなど、「海洋の安全の確保」が課題となっている。

以上のような観点から、我が国の主権の及ぶ領海等における外国船舶の航行の秩序を維持するとともにその不審な行動を抑止し、領海等の安全を確保するため、2008年の第169回通常国会に「領海等における外国船舶の航行に関する法律案」が提出され、6月5日に成立するに至った(公布は6月11日)。


■法律案の概要

一、領海等における外国船舶の航行方法

1 領海及び内水(以下「領海等」という。)における外国船舶の航行は、通過(内水においては、新内水に係るものに限る。)又は水域施設等との往来を目的として継続的かつ迅速に行われるものでなければならない(注参照)。

2 外国船舶の船長等は、やむを得ない理由がある場合を除き、領海等における停留等、また内水(新内水を除く。)における港湾内の水域施設等に出入りしない航行をさせてはならないものとする。

二、外国船舶の通報義務

外国船舶の船長等は、領海等において停留等をさせる必要がある場合等は、その理由が明らかな場合を除き、あらかじめ、その理由等を最寄りの海上保安庁の事務所に通報しなければならないこととする。

三、外国船舶に対する立入検査及び退去命令

海上保安庁長官は、領海等において現に停留等を伴う航行等を行っている外国船舶と思料される船舶について、その理由を確かめる必要があると認めるときは、海上保安官に、当該船舶への立入検査をさせることができることとするとともに、立入検査の結果、当該船舶の船長等が一の2に違反していると認めるときは、当該船長等に対し、領海等からの退去を命ずることができることとする。

四、この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。


(注) 「領海」とは領海の基線(海岸の低潮線、直線基線及び湾口もしくは湾内等に引かれる直線)からその外側12海里(約22辧砲寮までの海域をいう。これに対し、「内水」とは領海の基線の陸地側の水域をいう。

「新内水」とは、内水のうち直線基線(国連海洋法条約において、海岸の著しい曲折や海岸に沿って至近距離に一連の島がある場合、適当な地点を結ぶ直線を基線とすることができる)により新たに内水となった部分をいい、外国船舶は無害通行権を有する。

「水域施設」とは、船舶が航行、停泊、荷役のために利用する水面をいう。


■法律案に関する主な国会論議

(本法律案がこの時期に提出された理由とその必要性)

我が国領海内において、はいかい、停留等を行う外国船舶の隻数について、年間約4千隻が確認され、その中で、正当な理由がないと推測される船舶が10隻程度あると海上保安庁長官より答弁があった。そうした中、領海等における外国船舶を規制する法律が何故今日まで整備されてこなかったのか、また、この時期に整備をするに至ったのか論議された。

法律がこれまで未整備であった理由について、政府は、海洋利用国家としての我が国の基本的立場から、海洋の自由を尊重し、規制については必要最小限の制限にとどめるべきとする考えに基づいていたためとした。しかし、昨今、不審船事案など海洋をめぐる情勢が変化したことに加え、海洋基本法の成立により、新たな海洋立国の実現に向け、海洋の安全確保のための施策の積極的推進が求められるようになったことから、本法律案を提出するに至ったなどとしている。

また、法律の必要性について、これまで領海内の不審な外国船舶の取扱いについては、漁業法や海上保安庁法を根拠に対応してきたが、漁業法では、漁船には強制的に立入検査を行うことができるものの、漁船以外の貨物船等は対象にならないこと、また海上保安庁法の規定では、任意の立入検査を求めるにとどまり、退去命令についても、犯罪行為が明らかな場合等に係る非常に制限的な規定であるため、十分に適応できないとする旨の答弁がなされている。


(立入検査及び退去命令の手順及び海上保安官の安全確保)

本法律により可能となる不審な航行をする外国船舶への立入検査及び退去命令の具体的な手順の在り方が論点となった。

政府によれば、海上保安庁が行う海上警備の際、はいかいや停留等を行っている外国船舶を見つけた場合、まず海上保安庁の陸上事務所に確認を行い、その結果、通報がない場合や通報内容と異なった行動が疑われる場合などに、立入検査を行うとしている。ただし、水先人の乗船を要請していたり、衝突を避けるために停留している等の「理由が明らかである場合」や、荒天や海難その他の危機を避けたり、人命救助等の「やむを得ない理由がある場合」には立入検査の対象にならないとしている。また、立入検査を行った結果、正当な理由等がなかった場合、領海外への退去命令を出すことになるとの答弁がなされた。

なお、立入検査を拒否したり、虚偽の陳述などをした者は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金、退去命令に違反した船長等は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされている。

また、立入検査の実施は危険を伴う可能性もあり、海上保安官の安全確保の在り方についても論議がなされた。この点ついて、政府からは、海上保安官は、海上保安庁法第20条の規定により、警察官職務執行法第7条を準用し、武器使用が認められ、加えて立入検査の際はヘルメットや防弾チョッキの着用を徹底するほか、巡視船艇の外板を厚くしたり、防弾ガラスを設置するなど装備強化を推進するなど、安全確保に努めるとする旨の考えが示された。


(海上保安官の増員と巡視船艇・航空機の緊急整備)

海上保安庁は、海洋権益の保全や不審船対策など新たな業務課題が増大する中で、人員不足がかねてから指摘されており、巡視艇の乗組員が執務時間外の場合、沿岸部や港内の事件・事故への初動対応では、自宅で休養中の乗組員を緊急に呼び出すなどしており、執務時間内と比べ平均30分程度の遅延が生じている。現在、この遅延を解消し、また、容疑船の継続的監視や長期に及ぶ事件・事故対応を的確に行うべく、巡視艇における複数クルー制拡充のための増員を現場要員中心に行っており、この点についても論議がなされた。

政府は、平成20年1月より、5人乗りの巡視艇が1隻のみ配置されている34部署について5人の増員を行った結果、2クルー制が導入され、即応体制確保率が22.3%から44.7%に改善されたとした。しかしながら、理想的とされる24時間対応可能な即応体制の確保は、すぐには実現が困難であるとし、順次重点的に配備を行い、安全確保に努めたいとする旨の見解が示されている。

現在、海上保安庁の定員は、諸外国の海上保安機関と比較した場合、職員1人あたりの海岸線延長距離では米国沿岸警備隊の6倍以上、排他的経済水域面積では韓国海洋警察庁の9倍以上となっており、1人あたりの負担が非常に大きく、その早急な改善が課題となろう。

また、海上保安庁所有の巡視船艇・航空機の老朽化及び速力不足等が以前から指摘されており、これについても論議が行われた。政府からは、現在、巡視船艇のうち約120隻、航空機の約30機が耐用年数を超えており、平成18年度より高速化や高性能化を目的とする整備を行い、2010年代の早い時期に完了させるよう努めている旨の答弁がなされている。


◇  ◇  ◇  ◇


本法律は、現に領海等において、不審な行動を行う外国船舶を取り締まることにとどまらず、将来、不審な行動を行おうとする船舶に対する抑止効果も期待できるものであり、海洋の安全確保に向けた海上保安庁の適切な運用が望まれる。

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