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法案の解説と国会審議

国家公務員制度改革の総合的な推進の第一歩

〜国家公務員制度改革基本法〜

平成20年6月13日公布 法律第68号

著者:政木 広行

1.法案提出、修正の経緯

年次・年功的な人事管理、営利企業や特殊法人あるいは公益法人への再就職などをめぐって、国家公務員に対する国民の視線は年々厳しさを増す中、平成19年4月、政府は「公務員制度改革について」を閣議決定した。

この閣議決定に基づき政府は、人事評価制度の導入等により能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図るとともに、離職後の再就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会の設置等により退職管理の適正化を図るほか、官民人材交流センターの設置により官民の人材交流の円滑な実施のための支援を行うこと等を内容とする「国家公務員法等の一部を改正する法律案(以下「改正国家公務員法」という。)」を提出し、あわせて引き続き公務員制度の総合的な改革を推進するため、基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に向けて立案し提出することとした。

改正国家公務員法が同年6月、参議院本会議における内閣委員長の中間報告を経て可決・成立した後、同年7月、内閣総理大臣の下に採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について総合的・整合的な検討を行うことを目的とする「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会(以下「懇談会」という。)」が設置された。

懇談会は、平成19年7月から20年1月まで12回開かれ、その結果をまとめた報告書は20年2月5日、懇談会の座長から福田内閣総理大臣に提出された。

政府は、この報告書に基づいて「国家公務員制度改革基本法案(以下「政府案」という)」を立案し、同年4月4日、国会に提出した。

衆議院内閣委員会において政府案の審査を行う中で、それと並行して会派間で修正に向けた協議が行われ、その結果は、平成20年5月28日の衆議院内閣委員会に提出された修正案に結実した。修正案及び修正部分を除く政府案は、衆参両院の内閣委員会における審査を経て、同年6月6日の参議院本会議において可決・成立した。

なお、成立した修正案及び修正部分を除く政府案(国家公務員制度改革基本法、以下単に「基本法」という)のうち、国家公務員制度改革推進本部に関する規定を除く規定は公布の日から、国家公務員制度改革推進本部に関する規定は同年7月11日から施行されている。


2.政府案の概要

平成20年4月4日に政府が国会に提出した政府案の概要は、以下のとおりである。

(一)イ 国家公務員制度改革に係る基本理念※を定め、国は、この基本理念にのっとり改革を推進する責務を有する。

※基本理念は、以下のとおり。

・議院内閣制の下、国家公務員がその役割を適切に果たすこと。

・多様な能力及び経験を持つ人材を登用及び育成すること。

・官民の人材交流を推進するとともに、官民の人材の流動性を高めること。

・国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保及び育成すること。

・国民全体の奉仕者としての職業倫理を確立するとともに、能力及び実績に基づく適正な評価を行うこと。

・能力及び実績に応じた処遇を徹底するとともに、仕事と生活の調和を図ることができる環境を整備すること。

・政府全体を通ずる国家公務員の人事管理につき説明責任を負う体制を確立すること。

ロ 政府は、この法律に定める基本方針に基づき改革を行うこととし、このために必要な措置については、この法律の施行後5年以内を目途とし、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後3年以内を目途として講ずる。

(二) 議院内閣制の下で国家公務員がその役割を適切に果たすため、次の措置を講ずる。

イ 各府省に国会議員への政策の説明等の政務に関し、大臣を補佐する職(政務専門官)を設けるとともに、これ以外の職員が国会議員に接触することに関し、大臣の指示を必要とするなど、大臣による指揮監督をより効果的なものとするための規律を設ける。

ロ 内閣官房に内閣総理大臣の命を受け、内閣の重要政策のうち特定のものに係る企画立案に関し内閣総理大臣を補佐する職(国家戦略スタッフ)を置き、各府省に大臣の命を受け、特定の政策の企画立案及び政務に関し、大臣を補佐する職(政務スタッフ)を置く。

ハ 事務次官、局長、部長等の幹部職員の任免について、内閣総理大臣の承認を要するものとし、内閣人事庁は、各大臣が人事を行うに当たって、情報提供、助言等の支援を行うものとする。

ニ 各府省は、幹部職員の候補者名簿の原案を作成し、内閣人事庁は候補者の適格性の審査を行う。ただし、内閣人事庁も必要に応じ候補者名簿を作成することができる。

ホ 幹部職員は、内閣人事庁及び各府省に所属する。国家戦略スタッフは、内閣人事庁の職員をもって充てる。政務専門官、政務スタッフ、課長その他の管理職員は、内閣人事庁に併任する。

ヘ 職員の育成及び活用を各府省横断的に行うとともに、幹部職員及び管理職員について、適切な人事管理を徹底するため、総合職試験の合格者からの採用及びこれに伴う各府省への配置の調整、幹部職員の任用に係る適格性の審査及び候補者名簿の必要に応じた作成その他の大臣が人事を行うに当たっての情報提供、助言等の支援その他の事務を内閣人事庁において一元的に行うための措置を講ずる。

(三) 政府は、多様な能力及び経験を有する人材を登用し育成するため、現行の採用試験の種類と内容を抜本的に見直して新たな採用試験の種類を設けるとともに、管理職員が職責を担うにふさわしい能力及び経験を有する職員を総合的かつ計画的に育成するための仕組み(幹部候補育成課程)を整備する。

(四) 政府は、官民の人材交流を推進するとともに、官民の人材の流動性を高めるため、人事交流について透明性を確保しつつ、手続の簡素化及び対象の拡大等を行うこと等の措置を講ずる。

(五) 政府は、国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保育成するため、国際対応に重点を置いた採用を行うための措置等を講ずる。

(六) 政府は、職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底のため、人事評価について、職業倫理を評価の基準として定め、懲戒処分について、適正かつ厳格な実施の徹底を図るための措置を講ずる。

(七) 政府は、職員が意欲と誇りを持って働くことを可能とするため、業務の簡素化のための計画を策定するとともに、職員の超過勤務の状況を管理者の人事評価に反映させるための措置、優秀な人材の国の行政機関への確保を図るために職員の初任給の引上げ、職員の能力及び実績に応じた処遇の徹底を目的とした給与及び退職手当の見直し、将来における定年の引上げについての検討等の措置を講ずる。

(八) 政府は、次に定めるところにより、内閣官房長官を長とする内閣人事庁を設置し、このために必要な法制上の措置を、この法律の施行後1年以内を目途として講ずる。

イ 内閣人事庁は、政府全体を通じる国家公務員の人事管理について、国民に説明する責任を負うとともに、総合職試験の合格者からの採用及びこれに伴う各府省への配置の調整等の事務を一元的に行う。

ロ 総務省、人事院その他の国の行政機関が国家公務員の人事行政に関して担っている機能について、必要な範囲で内閣人事庁に移管する。

(九)イ 政府は、国家公務員の労働基本権の在り方については、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討する。

ロ イにあわせて、地方公務員の労働基本権の在り方についても検討する。

(十)イ 内閣に国家公務員制度改革推進本部を設置し、国家公務員制度改革を総合的かつ集中的に推進する。

ロ 国家公務員制度改革推進本部に事務局を置き、事務局長は、公務内外の人事管理制度に関し識見を有する者をもって充てる。


3.修正案の概要

平成20年5月28日に衆議院内閣委員会に提出された修正案の概要は、以下のとおりである。

(1) (一)イについて、国家公務員制度改革の基本理念に「男女共同参画社会の形成に資すること」を追加する。

(2) (二)ロについて、政治主導の強化を図る観点から、議院内閣制の下での国家公務員の役割に関し、政治主導を強化する旨を明記するとともに、国家戦略スタッフ及び政務スタッフを特別職の国家公務員とする。

(3) (二)ニについて、幹部職員及び管理職員の人事管理の内閣による一元化に関する事項について、政府案の趣旨を明確化する観点から、縦割り行政の弊害を排除するため、内閣の人事管理機能を強化し、並びに多様な人材の登用及び弾力的な人事管理を行えるよう、次の措置を講ずる。

a 幹部職員及び管理職員を対象とした新たな制度をそれぞれ設ける。

b 幹部職員の任用については、その適格性の審査及び候補者名簿の作成を内閣官房長官が行うこととし、各大臣が人事を行うに当たり、任免については内閣総理大臣及び内閣官房長官と協議した上で行う。

c 幹部職員及び管理職員については、国の行政機関の内外から多様かつ高度な能力及び経験を有する人材の登用に努め、その処遇を弾力的なものとするための措置を講ずる。

(4) (二)ヘについて、職員の育成及び活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員及び管理職員について適切な人事管理を徹底するため、内閣官房が一元的に行うこととする事務について、総合職試験の合格者からの採用及び各府省への配置の調整を行う旨の規定を政府案から削除する。

一方、幹部職員等に係る各府省ごとの定数の設定及び改定、管理職員を任用する場合の選考に関する統一的な基準の作成及び運用の管理並びに幹部職員及び管理職員以外の職員の府省横断的な配置に関する指針の作成に関する規定を追加する。

(5)a (二)イについて、政官関係の透明化を含めた政策の立案等の責任の明確化に関し、政府案における政務専門官を置く旨の規定及びその他の職員の国会議員への接触制限に関する規定を削除する。

その上で、政官関係の透明化を含め、政策の立案等の各段階における責任の所在を明確化し、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資するため、職員の国会議員との接触に関する記録の作成等及びその情報の適切な公開のために必要な措置を講ずる。

b (二)イについて、職員の国会議員との接触が個別の事務事業の決定等に係るものであるときは、その記録の適正な管理及びその情報の公開の徹底に特に留意するとともに、各般の行政過程に係る記録の作成、保存その他の管理が適切に行われるようにするための措置を講ずる。

(6) (七)について、定年を段階的に65歳に引き上げることについて検討することとし、その検討に際し、高年齢である職員の給与の抑制を可能とする制度その他の制度の導入について検討する。

(7) (八)について、内閣人事庁に代えて、内閣官房の新たな事務を行わせるため、内閣官房に内閣人事局を置くこととし、このために必要な法制上の措置については、この法律の施行後1年以内を目途として講ずる。

(8) (九)イについて、以下のように改める。

「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解の下に、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」


4.国会での主な論議

(1)キャリア制度の廃止

政府案においては、改正国家公務員法による能力・実績主義の導入に加え、現行のキャリア制度を廃止することを柱の一つとしていた。

キャリア制度の問題の本質を解決する手段について、内閣府特命担当大臣(公務員制度改革担当、以下単に「担当大臣」という)は、「採用試験の区分を改め、総合職試験、一般職試験、専門職試験に再編し、一般職試験や専門職試験を合格してきた人たちの中に、仕事を始めてみたら極めて高い政策の企画立案能力があるという評価を受ける者について、新たに導入される幹部候補育成課程に加えることが可能になる」旨答弁し、また幹部職員の選抜及び育成方針について担当大臣は「幹部候補育成課程は、職員の採用後の任用について、人事評価に基づいて適切に行われなければならないとし、さらに、人事評価に基づく選定と絞り込みを根本原則とし、採用試験の区分にとらわれることなく、能力・実績主義が徹底される仕組みとして整備することとしている。したがって、現行のキャリア制度に代わり、能力・実績主義に基づいた人事制度が確立される」旨答弁している。

しかし「現行のキャリア制度は固定化、そして競争のない横並び意識が問題だとして試験区分を変えるといいながらも、総合職試験の採用者については、現行の擬鏤邯海藩召衒僂錣蕕覆い里任△譴弌△泙気靴固定化、スーパーエリートをつくり出すことになりはしないか。基本法として抜本的改革をするといいながらも、実は、高いハードルを掲げながら、現行とさして変わらない方針で制度の改正をしようとしているように映ってしまうのではないか」という指摘に担当大臣は「懇談会の議論でも総合職の数をふやした方が競争がもたらされるのか、それとも、総合職の数を減らして、例えば一般職の試験のルートの人たち、あるいは専門職試験のルートの人たちをそれぞれ半数ぐらい入れたらどうだという意見もあった。いずれにしても、固定化されないこと、そして競争的な環境をつくっていくこと、これはまさに変え難い理念であり、その理念に基づいた具体的な制度設計を基本法の成立後に行っていくことが大事である」旨答弁するにとどめている。


(2)政官接触

適切な「政」と「官」、つまり国会議員と政府職員の関係の在り方については、既に平成14年7月の閣僚懇談会において、当面内閣が取り組むべき方針を申し合わせているが、政府案では(二)イにおいて、政官接触の制限に関する規定を設けることとした。

「官」から「政」への接触の制限について、担当大臣は「国会議員にとって必要な情報収集が阻害されることのないようにするという基本方針のもとに提案した。一方、現在、必ずしも国会議員と公務員との間に明確なルールはない。本来大臣を支えるべき公務員が、大臣の方針とは関係なく折衝を行ったり、ロビーイング活動を行ったり、結果として政策決定における政治主導を損ない、官僚主導とも言われる状況を生み出している。そうしたことを規律していきたい」旨答弁している。

しかし、これについては衆議院内閣委員会における審査の中で「国会議員にとって必要な情報収集が阻害されることがないようにするためのルールづくりは困難を極めるのではないか。情報公開の徹底、透明化という形で、どういう風に接触をしたのかを記録として残すこととし、大臣の意に反するような行動をした場合は、記録に残さないケースもあるかもしれず、その場合は記録を残さなかったとしてルール違反とする方が現実的ではないか」といった指摘がなされ、修正案においては、いわゆる政官接触の禁止、政務専門官の設置といった規定は削除され、透明性、公開性を高めるための規定が設けられた。

修正案が提出された後、政官接触の公平性の確保について「規律ある政官接触は必要であるという観点から、政官接触については、当事者である国会議員と官僚、双方が記録を確認した上で保存して公開されるようなルールをつくる、それから、議員からの接触だけではなくて、公務員側からのロビーイング活動についても公平に記録が残されるべきだと考えるが、この公平性を担保するために、どのような記録方法を想定しているか」という質疑があり、これについて修正案提出者からは「記録をきっちり残す、そして公開するということで、透明性を高めるという趣旨である。その一方で、記録のとり方が下手だ、また故意に変えるということもあるかもしれないという中で、やはり政治家側の発言というものをきっちりチェックするシステムも恐らく必要だろうと思う」旨の答弁があった。

また「会えば必ず記録を取る、取らせるということにするということだと思っている。そして、その際に、その原則を守らなかった場合、又はその記録の内容に、虚偽の記録をしたり、又は管理そのものを適正に行わなかった場合については、懲戒処分を含めた一種の処分をするというような内部統制というものを内規又は具体的な法の中で定めていくことが一案かと思っている。その一方で、恐らく各政治家がやることになると思うが、やはり己の身を守るためにも、政治家側でも必ず、接触した場合に、接触したこととその記録を残していくということも考えられる。加えて、原則として複数で会うということを定めていくことも一つのリスクマネジメントになるのではないかと思っている」旨の答弁も修正案提出者からなされた。


(3)内閣における人事の一元管理

内閣による人事の一元管理については、政府案が立案される以前にも平成12年12月の閣議決定「事務次官、局長その他の幹部職員の任免に際し内閣の承認を得ることについて」によって、幹部職員の任免については、内閣官房長官が主催する閣議人事検討会議の決定を経て、閣議決定により決めることとなっているが、12年12月の閣議決定以降の現状に関し担当大臣は「各省大臣の人事権と称して、人事権は内閣ではなく各省にあるんだというがごとき現実が横行している。こうした現状では内閣の幹部職員の一元管理という理念にはほど遠い。であるが故に、やはり今回の基本法に盛り込まれたような、内閣人事庁構想をかなめとした新しい制度が必要なものと考える」旨答弁している。

さらに、衆議院内閣委員会に出席した参考人からは「行政の実務を経験した中で、行政の縦割りの弊害の根源は公務員制度にあると痛感していた。長年にわたり、内閣による一括採用、一括管理の必要性を主張してきたが、人事権の所在が不明確になるとか、優秀な人材が採用できなくなるという、私から言えば的外れな議論でいつも実現しなかった。この法案により、ようやく人事の一元管理の道筋がつくことになり、縦割り行政の弊害は克服されることになるのではないかと期待している。特に、一括採用については、ある特定の省に行きたいという希望があるから公務員試験を受けるのであって、一括採用ではどこの省に配属されるかわからないから、優秀な公務員志望者が減り、いい人が採用できなくなるのではないかという意見がよく聞かれるが、採用主体である内閣人事庁が希望者と各府省の意向を踏まえて配属先を調整して決めていくから、そのような批判は当たらない。また、一括管理については、数多くいる幹部職員を一括管理することなど可能なのかという意見もある。しかしながら、各省の人事当局と内閣人事庁が密接に連絡をとりながら進めれば、課長級以上であれば一括管理は可能と考える」旨の発言があった。

しかし、これについては衆議院内閣委員会における質疑の中で「各府省が人事案をつくることが問題であると認識していながら、政府案では各府省が幹部職員の候補者名簿の原案を作成することができる形になっており、現行と変わらない。これでは、幹部人事の内閣一元管理というのは達成できないのではないか」という指摘があった。


行政の肥大化を防ぐため、政府案では内閣人事庁としていたものを修正し、内局としての内閣人事局を置くこととした。

幹部職員の任用に関し、「各大臣が幹部職、例えば局長級に特定の人物を任用しようとするとき、大臣と官房長官あるいは各省と内閣人事局との関係はどういう手続を経て幹部を任用することになるか」という質疑に対し、修正案提出者からは「各大臣は、その人材、有識者を内閣官房長官に推薦をし、適格性を審査した上で名簿に登載してもらう。その上で各大臣は名簿に登載された人材、有識者について内閣総理大臣及び内閣官房長官と協議をし、任命することになる」旨の答弁があり、担当大臣も「政府案の原点は、大臣の人事権という名の下に各省事務方の仲間内人事が横行し、各省大臣がそれを追認せざるを得ない状況に置かれている実態があるのではないかと、そういう問題認識からスタートしており、こういったことを改めるためには、まさしく内閣人事庁でも候補者名簿を提示するということが大事なことであるから、政府案においてそういう仕掛けをつくったところである。修正案においてもこうした基本的な問題認識は共有している。官房長官が一元的に候補者名簿を作成をすることとし、内閣一元化をより強化をしたものと考えている」旨答弁している。


(4)労働基本権の在り方

平成18年7月から19年10月まで、公務員の労働基本権の在り方について15回にわたる会議を開き、調査検討を行ってきた行政改革推進本部専門調査会は「一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与するとともに人事院勧告を廃止して、政府、すなわち使用者が主体的に勤務条件を考え、職員の意見を聞いて決定できる機動的かつ柔軟なシステムを確立すべきである」とする一方で「改革に伴うコスト等に十分留意しつつ、慎重に決断する必要があること、改革の全体像を国民に提示して、その理解を得ることが必要不可欠である」と報告している。

公務員への労働基本権の付与に関するILO(国際労働機関)による勧告について「ILOの国際労働基準に合致した仕組みにしていくためには、まず初めの一歩として協約締結権の付与は避けて通れない課題であり、政府と関係労働組合が話し合っていくことが重要だと思うが、検討に当たって、是非とも労使が改革の方向で話し合う場となるようにすべきではないか」という趣旨の指摘があり、これに対し担当大臣は「過去3回にわたるILO勧告は、基本的に公務員制度改革について政府に対し組合を初め各方面と十分話し合うよう要請をしたものと認識しており、政労協議などを通じながらこちらの考えも伝え、また職員団体の考えも聞きながら今回の政府案を立案したところである。基本法成立後の検討についても、関係当事者の意見を十分聞きながら進めていきたい」旨答弁している。

しかし、労働基本権見直しの基本理念、方向について担当大臣は「一定の非現業職員について協約締結権を新たに付与する一方で、改革に伴うコスト等に十分留意して慎重に決断する必要があり、改革の全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠である」旨の答弁に終始した。

基本法における労働基本権に関する規定を修正することとなった背景について、修正案提出者は「行政改革推進本部専門調査会の報告書に、公務員の労働基本権の在り方については、『現行のシステムは、非現業職員について、その協約締結権を制約し、一方で使用者を、基本権制約の代償措置である第三者機関の勧告により拘束する。このように労使双方の権限を制約するシステムでは、労使による自律的な決定は望めない。』と書かれている。修正案ではこのような現状の問題にかんがみ、自律的労使関係制度を措置することを政府に求めており、その趣旨のもとで今後各般の方面から政府において検討されるということだと理解をしている」旨発言している。

なお、参議院内閣委員会における議論の中で「自律的労使関係制度とは民間並みの労使関係だと理解してよいか」との質疑に対し、担当大臣は「自律的労使関係制度の中身について、国家公務員制度改革推進本部の下に労働組合を含め関係者の参加する検討機関を設置し、その場において具体的な検討を行うことになる」旨答弁するにとどめた。

質疑者がさらに「完全な労使間交渉による賃金決定は基本法に示されていないのであれば、自律的労使関係制度が措置されたとしても、労使交渉において納得性のある結論を得るためには、現行の人事院勧告に相当するような官民給与の状況を正確に示す仕組みがどうしても必要であり、このような仕組みも併せて明示すべきである」旨指摘したところ、担当大臣は「行政改革推進本部専門調査会の報告では、『一定の非現業職員に協約締結権を付与し、人事院等による給与勧告を廃止する場合に、交渉や仲裁の基準として、客観的なデータを第三者機関が調査収集する仕組みが必要か、検討が必要である。』としており、基本法成立後、協約締結権の在り方について検討する際には、この点も併せて検討がなされるものと考えている」旨答弁している。


(5)国家戦略スタッフ、政務スタッフ

修正により特別職の国家公務員として位置付けられることになった国家戦略スタッフ及び政務スタッフのうち、国家戦略スタッフの規模に関する質疑に対し担当大臣は「懇談会では事務次官クラスを十数名という議論もあったが、内閣の重要政策について企画立案を機動的に補佐するという趣旨からすると、実務を機動的にこなすためには、中堅、若手の人材も必要である。人数規模については今後の検討課題であるが、イメージとしては数十名から百人ぐらいは必要になるのではないかと思う」旨答弁しており、また政務スタッフの人事管理に関する質疑に対し担当大臣は「今後の検討課題であるが、政務スタッフを経験した者が有力な幹部候補になり得るということを考えれば、内閣人事局が政務スタッフの人事情報の管理を行うということは適切だと考える」旨答弁している。

また、国家戦略スタッフや政務スタッフの退任後の扱いについて「任免の手続や服務、懲戒などの規定を整備しないまま特別職を拡大していくと、官民癒着などという問題が生じるおそれがある」旨の指摘に対し、担当大臣は「相応の給与の支給や兼業などに関し、柔軟な勤務形態とすることなどを想定している。退任後の扱いとしては、例えば、一般職の公務員が国家戦略スタッフや政務スタッフに任用された場合、その任を終えた後に再び一般職の公務員として勤務を継続できるような仕組みを整備することなどを想定している。具体的な制度の内容については基本法成立後に検討していく」旨答弁している。


(6)人事行政の中立公正の確保

衆議院内閣委員会における議論の中で、人事院と内閣の一元化とのバランス、役割分担について、今後どういうことになっていくか、という趣旨の質疑に対し、修正案提出者から「公務員の中立性、公正性というのは公務員制度のまさに根幹をなすものであり、これまで中央人事機関としての人事院がそれに果たしてきた役割は十分認識をしている。一方で、公務員制度においては使用者としての内閣の責任というのが極めて重要であり、今後とも、内閣と人事院それぞれの立場で、公務員が中立公正が担保できるように機能していくものだというふうに理解している。それぞれの職務の範囲、あるいは、どういう機能を具体的に果たしていくかというのは、これからの制度の詳細設計の中で議論を詰めていきたいと考えている」旨の答弁があった。

また、参議院内閣委員会における質疑の中で「人事院が国家公務員の人事行政に関し担っている機能を必要な範囲で、政府案では内閣人事庁へ、修正案では内閣官房に移管するとしているが、(いずれも)中立公正の確保の在り方を見直す趣旨の規定ではないか」とする指摘に対し、修正案提出者からは「政府案及び修正案においても、公務員の中立公正を確保していくことがとても重要なことであるという考えに基づき、引き続き人事院が重要な役割を担っていくものだと考えている」旨の答弁があった。


5.今後の課題

基本法の成立後、更に国家公務員制度改革を推進するに当たっては、国民に開かれた自律的労使関係制度、内閣人事局の在り方など、具体的な制度設計に向けて検討すべき課題に加え、定年の段階的な引上げに向けた検討など、これからも数多くの課題を乗り越えていかねばならない。

その上で今後は総論を議論する段階から、国家公務員制度改革推進本部に置かれた顧問会議(国家公務員制度改革の推進のために講ぜられる施策に係る重要事項について審議し、内閣総理大臣に意見を述べる)あるいは労使関係制度検討委員会(基本法の九(イ)及び(ロ)の規定に基づき、政府が講ずべき措置に関する事項について調査審議し、その結果に基づき内閣総理大臣に意見を述べる)などにおいて、各論を議論する段階に移っていくことになる。

しかし、議論あるいは検討を行うにあたり、そこに少しでも滞りがあれば、国家公務員に対する国民の視線は間違いなく一層厳しさを増すことであろう。今後は基本法に掲げられた精神を踏まえ、着実に次のステップに向け歩んでいくことが求められる。

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