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HOME > ニュース&ダイジェスト 法令 > 法案の解説と国会審議 > 「宇宙開発利用に関する施策の総合的・計画的推進」

法案の解説と国会審議

宇宙開発利用に関する施策の総合的・計画的推進

〜宇宙基本法の成立〜

平成20年5月28日公布 法律第43号

著者:阿部 昌弘

平成20年5月21日、宇宙基本法(以下「本法」という。)が成立し、8月27日に施行された。本法は、宇宙開発利用に関する施策を総合的・計画的に推進するため、宇宙開発利用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国の責務等を明らかにし、並びに宇宙基本計画の作成について定めるとともに、宇宙開発戦略本部を設置する等の措置を講じようとするものである。


法案提出の背景・経緯

冷戦下にあった昭和40年代、当時の大国であった米国、ソ連をはじめとする先進諸国は、宇宙の開発・利用を国家の一大事業として取り上げ、その推進に力を注いでいた。昭和41年には宇宙空間における探査と利用の自由、領有の禁止、宇宙平和利用の原則、条約の当事国が有する責任などを定めた、いわゆる「宇宙条約」が国連総会において採択され、翌年我が国もこれを批准している。

そのような状況下で我が国においても、本格的な宇宙開発の推進及びその体制の整備が強く要請されるようになった。しかし、宇宙開発は多額の経費を要するものであり、また限られた人材を有効に活用する必要があるため、我が国が本格的な宇宙開発に乗り出すに際し、総合的かつ計画的に推進することが急務となっていた。

このような情勢にかんがみ、第58回国会(昭和43年)に政府は、宇宙開発に関する国の施策の総合的かつ計画的な推進に資するため、当時の総理府に宇宙開発委員会を設置する「宇宙開発委員会設置法案」を国会に提出した。同法案は衆議院における修正を経て昭和43年4月26日に成立した。

次いで政府は、第61回国会(昭和44年)に「宇宙開発事業団法案」を国会に提出し、衆議院における修正を経て昭和44年6月18日に成立した。同法により、当時の科学技術庁に昭和39年から置かれていた宇宙開発事業本部を発展する形で、我が国の宇宙開発の中枢的実施機関として宇宙開発事業団(特殊法人)が設立された。また、同法案を衆議院本会議において採決するに先立ち、「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議(以下「平和利用決議」という。)」を行った。更に、参議院では科学技術振興対策特別委員会において附帯決議を行った。これらにより、我が国における宇宙の開発及び利用は「平和の目的に限る」とされ、この「平和の目的」は非軍事目的と解釈されてきた。

なお、宇宙開発委員会は平成13年1月の中央省庁再編以降、文部科学省に置かれる国家行政組織法第8条の機関となり、我が国の宇宙開発の長期的かつ基本的な方向を見定めながら、その中心的な実施機関である独立行政法人宇宙航空研究開発機構の中期目標の基となる「宇宙開発に関する長期的な計画」等に関し調査審議を行う委員会となった。一方、宇宙開発事業団は平成15年に航空宇宙技術研究所、宇宙科学研究所と統合し、文部科学省及び総務省所管の独立行政法人宇宙航空研究開発機構に改組されている。

また、文部科学省の他にも内閣官房に内閣衛星情報センターと測位・地理情報システム等推進会議が、内閣府に総合科学技術会議があり、また情報通信を所管する関係で総務省が、宇宙産業と資源探査を所管する関係で経済産業省が、気象庁を所管する関係で国土交通省がそれぞれ宇宙の開発利用にかかわっているが、各府省を統括する組織が政府部内にないために我が国の宇宙政策が機能せず、宇宙産業が十分に発展しないという指摘がなされるようになった。

加えて、我が国をめぐる安全保障環境の変化や、中国を始めとするアジアや中東などにおいても積極的に宇宙開発利用が進められるなど、国際情勢の変化もあり、宇宙開発利用の重要性が世界的にも急速に増大していることにかんがみ、我が国において、従来宇宙科学の研究や宇宙技術の開発に特化して進められてきた宇宙開発利用を国家戦略として位置付け、総合的かつ計画的に推進し、国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与するとともに、我が国の安全保障、世界の平和及び人類の福祉の向上にも活用する必要性が指摘されていたところである。


法案の提出と成立

このような情勢にかんがみ、平成19年6月20日、自由民主党及び公明党の議員は、内閣に宇宙開発戦略本部を置き、宇宙開発の推進に関する基本的な方針を定め、あわせて宇宙開発に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策を定めることにより、国民生活の向上と経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和及び人類の福祉の向上に貢献することを目的とする「宇宙基本法案」(第166回国会衆第50号)を衆議院に提出した。

同法案は提出後、衆議院で継続審査となっていたが、自由民主党、民主党及び公明党の議員による協議の結果、新たに草案が取りまとめられた。これを受けて、平成20年5月9日(第169回国会)の衆議院内閣委員会において同法案の撤回が許可され、撤回した法案の目的に「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ」、「環境との調和に配慮しつつ」などの文言を加え、各条項に新たな目的を踏まえた文言を追加した「宇宙基本法案」(衆第17号)が、自由民主党、民主党及び公明党の議員により提出され、賛成多数によりこれを衆議院内閣委員会提出の法案とすることに決した。本法案は5月13日の衆議院本会議で賛成多数で可決された後、参議院に送付された。参議院では、5月20日に内閣委員会で質疑の後、賛成多数で可決され、翌21日に本会議で賛成多数により可決・成立し、5月28日に公布された。なお、衆議院内閣委員会において委員会提出の法案とすることに決した後、「宇宙の開発及び利用の推進に関する件」が決議され、参議院内閣委員会においては附帯決議を行った。両決議は宇宙開発利用を進めるに当たっての基本的な方向性、宇宙開発戦略本部の在り方を示すとともに、2年以内を目途に宇宙活動に関する法制の整備を行うよう努めること等を内容としている。


法案の概要

1.目的

本法は、日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ、環境との調和に配慮しつつ、我が国において宇宙の開発及び利用(以下「宇宙開発利用」という。)の果たす役割を拡大するため、宇宙開発利用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項(基本的施策)を定め、国の責務等を明らかにし、並びに宇宙基本計画の作成について定めるとともに、宇宙開発戦略本部を設置すること等により、宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和及び人類の福祉の向上に貢献することを目的とする。


2.基本理念

(1)宇宙の平和的利用

宇宙開発利用は、宇宙開発利用に関する条約その他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとすること

(2)国民生活の向上等

国民生活の向上、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困その他の人間の生存及び生活に対する様々な脅威の除去、国際社会の平和及び安全の確保、我が国の安全保障に資する宇宙開発利用の推進

(3)産業の振興

宇宙開発利用の積極的かつ計画的な推進、研究開発の成果の円滑な企業化等による我が国の宇宙産業その他の産業の技術力及び国際競争力の強化

(4)人類社会の発展

人類の宇宙への夢の実現や人類社会の発展に資する先端的な宇宙開発利用の推進及び宇宙科学の振興等

(5)国際協力等

国際社会における役割を積極的に果たし、我が国の利益の増進に資する宇宙開発利用の推進

(6)環境への配慮

宇宙開発利用が環境に及ぼす影響に配慮


3.国の責務等

(1)国の責務

国は、宇宙開発利用に関する基本理念にのっとり、宇宙開発利用に関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有すること

(2)地方公共団体の努力義務

地方公共団体は、宇宙開発利用に関する基本理念にのっとり、宇宙開発利用に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定・実施するよう努めなければならないこととすること

(3)連携の強化

国は、国、地方公共団体、大学、民間事業者等が相互に連携を図りながら協力することにより、宇宙開発利用の効果的な推進が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとすること

(4)法制上の措置等

政府は、宇宙開発利用に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置等を講じなければならないこととすること

(5)行政組織の整備等

国は、宇宙開発利用に関する施策を講ずるにつき、行政組織の整備及び行政運営の改善に努めるものとすること


4.基本的施策

国は、以下の事項のために必要な施策を講ずるものとする。

・国民生活の向上等に資する人工衛星の利用

・国際社会の平和・安全の確保、我が国の安全保障に資する宇宙開発利用の推進

・人工衛星等の自立的な打上げ等

・民間事業者による宇宙開発利用の促進

・宇宙開発利用に関する技術の信頼性の維持及び向上

・宇宙の探査等の先端的な宇宙開発利用、宇宙科学に関する学術研究等の推進

・宇宙開発利用の分野における国際協力の推進等

・環境と調和した宇宙開発利用の推進及び宇宙の環境保全のための国際的な連携の確保

・宇宙開発利用に係る人材の確保、養成及び資質の向上

・宇宙開発利用に関する教育・学習振興、広報活動の充実等

・宇宙開発利用に関する情報の適切な管理


5.宇宙基本計画

宇宙開発戦略本部は、宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、宇宙開発利用に関する基本的な計画(以下「宇宙基本計画」という。)を作成しなければならない。

宇宙基本計画が定める事項は次の,らとされている。

  ̄宙開発利用の推進に関する基本的な方針

◆ ̄宙開発利用に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策

  ↓△膨蠅瓩襪發里里曚、宇宙開発利用に関する施策を政府が総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

宇宙基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めることとされているが、政府はその実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


6.宇宙開発戦略本部

宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、宇宙開発戦略本部(以下「本部」という。)を置く。

本部の長は、宇宙開発戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。また、本部に宇宙開発戦略副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び宇宙開発担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、宇宙開発利用に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。本部員は、本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。

本部に関する事務は、内閣府において処理するための法制が整備されるまで、内閣官房において処理する。


7.体制の見直しに係る検討等

本則及び附則において、宇宙開発利用のための法制及び体制については次のとおり見直し等を行うこととされている。

・宇宙活動に関する法制の整備

・宇宙開発戦略本部に関する事務の処理を内閣府に行わせるための法制の整備等(施行後1年を目途)

・独立行政法人宇宙航空研究開発機構等の在り方、当該機関を所管する行政機関等の見直し(施行後1年を目途)

・宇宙開発利用に関する施策の総合的・一体的な推進のための行政組織の在り方等の検討


国会での主な論議

〔本法案と平和利用決議との整合性〕本法案と平和利用決議との整合性について、法案提出者は、本法案を「宇宙開発利用を我が国の安全保障に資するよう行うものと位置付けており、憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で防衛目的での(宇宙の開発)利用を行うことができる」との認識を示している。また、平和利用決議が採択された当時と比べ「宇宙開発利用の状況は大きく変わって」いることに加え、「軍事的利用は一切認めないとするのが決議の趣旨とは考えにくい」ことから、「決議の文言及びその趣旨に反するものではなく、(これを)否定したりこれを無効にするようなものではない」と答弁している。

〔宇宙開発利用に関する情報公開の在り方〕宇宙開発利用に関する情報公開について、法案提出者は、宇宙開発利用を軍事転用が可能な技術や高い付加価値を有する技術の集積であるとし、情報の公開を制限する必要があるとする一方で、宇宙にかかわる知識の集積や研究開発の成果の活用を図るために、可能なものについては広く公開していくことが必要であり、特性に応じて適切な管理が必要である旨答弁している。

〔日米衛星調達合意の見直しの必要性〕平成2年に政府等が調達する非研究開発衛星は国際競争入札によることを米国との間で合意した「非研究開発衛星の調達手続等について(以下「日米衛星調達合意」という。)」により、我が国の宇宙産業は深刻な影響を受けたと言われている。第16条は、民間事業者による宇宙開発利用の促進について規定し、国は国際競争力の強化を図るため、物品及び役務の調達を計画的に行うよう配慮するとしていることから、日米衛星調達合意の見直しについて質問がなされた。これについて法案提出者は、日米衛星調達合意が「我が国の宇宙産業に深刻な影響を与えた側面はある」とし、その見直しの必要性について、「宇宙開発戦略本部において、我が国の宇宙産業の国際競争力を強化するために技術力の向上や強化のための施策の実施」、「衛星調達の在り方」等について必要な検討が行われ、「アメリカ側の理解を得て今後協議をしていくということが望まれる」と答弁している。

〔宇宙開発担当大臣にふさわしい人物〕第29条は、宇宙開発担当大臣を内閣総理大臣の命を受けて、宇宙開発利用に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣と規定していることから、宇宙開発担当大臣にはどのような人物ふさわしいかについて質問がなされた。法案提出者は、内閣総理大臣が「諸般の事情を総合的に考慮して最も適切な方を任命」すると答弁している。また、従来、各省庁により行われていた宇宙開発利用を総合的・戦略的に行うという法案の趣旨から、「防衛大臣始めとする産学官の国防関係者」や「これまでやってきた体制に準ずる形で文部科学大臣」はふさわしくないとの認識を示している。

その他、宇宙開発基本計画の策定に有識者を関与させる必要性、本法案の成立による安全保障上の効果等についても論議が行われた。


法案成立後の状況

平成20年8月27日の本法施行に伴い宇宙開発戦略本部が発足し、9月12日には初会合が開催されている。宇宙開発戦略本部は ̄宙基本計画の作成、宇宙開発戦略本部に関する事務の処理を内閣府に行わせるための法制の整備等、1宙開発利用機関、宇宙開発利用に係る行政組織の在り方等に係る検討、け宙活動に関する法制の整備といった課題について検討していくこととなるが、上記事項の調査・検討のため、本部の下に宇宙開発戦略専門調査会が設置された。更に、10月1日に開催された宇宙開発戦略専門調査会の初会合において、ついて検討する宇宙開発利用体制検討ワーキンググループ、い砲弔い童‘い垢覬宙活動に関する法制検討ワーキンググループが同調査会の下に設置された。

また、本法の成立を受け、同年6月5日に宇宙基本法フォローアップ議員協議会が発足した。この協議会は本法の草案を作成した自由民主党、民主党及び公明党に加え国民新党の議員によって構成されており、本法の趣旨・目的に沿った行政組織の見直しが行われるよう監視するとともに、宇宙の防衛利用の範囲や情報公開の基準等について検討し、政府に提言を行う予定である。

今後、政府によって体制の整備を含め、宇宙開発利用が総合的・計画的に進められていくこととなるが、立法府としても政府が本法の趣旨・目的を外れることのないよう監視していく必要がある。

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