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HOME > ニュース&ダイジェスト 法令 > 法案の解説と国会審議 > 「東日本大震災からの復旧復興をめぐる予算審議」

法案の解説と国会審議

東日本大震災からの復旧復興をめぐる予算審議

−累次にわたった補正予算−

平成23年12月14日成立 平成23年度予算

著者:小川 眞

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、巨大地震、大津波、原発事故など未曾有の大災害となり、死亡者・行方不明者は約2万人、避難者は一時40万人を超えた。復旧復興の財政措置については、予備費の使用や複数回に及ぶ補正予算の編成が行われ、国会では復旧復興への取組、財源の在り方、震災の経済への影響などについて論議が行われた。


国債増発なしで編成された1次・2次補正

東日本大震災の発生時は、平成23年度当初予算の審議の最中であり、震災への対応について、当時の菅総理からは、「かつてない大災害であり、直ちに激甚災害の指定を行ったが、今後も必要な対策を適時適切に打ち出し、万全の措置を講じていく。緊急的な対応と本格的な復興を段階的に実施していくことが必要と考えており、被害の現状把握に努め、速やかに補正予算の編成、提出を行いたい」旨の考えが示された。

但し、阪神・淡路大震災に比べて被災地域が広範にわたり、被害額の算定に時間を要すること等が想定されたため、まずは22年度及び23年度予算の予備費を活用することとし、被災者支援や復旧経費等を盛り込んだ23年度第1次補正予算の編成は年度を越え4月22日に閣議決定、同月28日に国会に提出され、5月2日の成立となった。

23年度第1次補正予算は、被災したインフラの復旧、災害関連融資、がれき処理費用など総額約4兆円規模となったが、財源は国債増発を行わず、基礎年金国庫負担2分の1維持の財源の転用、経済危機対応・地域活性化予備費の減額(全額減額)、子ども手当の減額(上積み分の減額)、高速道路無料化社会実験の凍結など主に既定経費を減額する形で捻出された。国債増発をせずに補正予算を編成したことについて、政府からは、「財政の厳しい状況からすれば財政健全化の方向を示すことが必要であり、大規模な財政出動が見込まれる復興段階を前にした復旧段階の第1次補正予算については、国債に依存しない形で編成した。今後の補正予算編成に際しては、しっかりとした青写真をつくり、財源問題を含め検討していきたい」旨の答弁があり、復旧・復興と財政規律の維持との両立を目指していく考えが示された。

その後、本格的な復興を前に、当面の復旧対策に万全を期すとして、7月5日には23年度第2次補正予算が閣議決定され、同月15日に国会に提出された。第2次補正予算は、被災者生活再建支援、原子力損害賠償関連経費や東日本大震災復旧・復興予備費の計上など総額約2兆円規模となったが、その財源は、特例法を提出し、全額が22年度決算剰余金を活用することで賄われ、第1次補正予算と同様、追加の国債発行は行われなかった。


年金財源の震災復旧費への転用

基礎年金の国庫負担の財源については、税制抜本改革が行われてこなかったことから、平成21年度に国庫負担を2分の1に引き上げて以降、恒久的な財源が確保されないまま、特例的に特別会計の積立金や剰余金等により財源が手当されてきた。23年度当初予算においても、国庫負担2分の1維持に必要な財源は、特例的に(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の国庫納付や財政投融資特会及び外国為替資金特会の剰余金で賄うこととされた。

こうした中、東日本大震災からの復旧を図る第1次補正予算の財源として、この年金臨時財源2.5兆円が転用されることとなった。しかし、公的年金の財政は、高齢化に伴い支給額が増加し、近年は積立金の取崩しが行われていることから、年金財源の転用については、年金財政への影響等の問題が指摘された。

年金臨時財源の転用について、政府からは、「税制抜本改革により財源を確保することで、年金財政の長期的安定を確保し、保険料や年金額への影響を生じさせないことが可能である」旨の答弁があった。しかし、既に、23年度第1次補正予算の審議に当たり、民自公3党の合意(4月29日)では、第2次補正予算の編成の際にその見直しを含め検討を行うこととされており、予算審議の中でも、早期に年金財源の補てんを行うことが強く求められた。

その後、この年金臨時財源については、本格復興に資する23年度第3次補正予算の中で復興債の発行により、その財源が賄われることとなった。「社会保障・税一体改革成案(23年7月1日閣議報告)」では、社会保障の安定財源の確保に向け、2010年代半ばまでに段階的に消費税を10%まで引き上げるなど税制の抜本改革を行う方向性が示されている。次年度以降の国庫負担2分の1維持に必要な財源は、必要な税制上の措置を講じた上で確保することとされているが、当面、将来の税収を返済資金とする年金債(仮称)の発行により、財源を賄う方向なども取りざたされている。通常国会では、消費税引上げを含む税制改革関連法案提出が見込まれており、今後の税制抜本改革をめぐる動きが注目される。


多額の予備費計上をめぐる論議

平成20年秋のリーマンショック後に編成された21年度当初予算に経済緊急対応予備費として1兆円が計上されて以来、22年度当初予算には経済危機対応・地域活性化予備費が1兆円、23年度当初予算にも同予備費8,100億円が計上され、近年、多額の予備費計上が続いている。東日本大震災後は、23年度第1次補正予算の財源に同予備費(8,100億円)の全額が充てられたが、23年度第2次補正予算では、新たに東日本大震災復旧・復興予備費8,000億円が計上された。

第2次補正予算(約2兆円規模)においては、具体的な使途を決めない同予備費8000億円が全体の約4割を占め最大の歳出項目となっていることから、こうした予備費計上の理由が質された。これに対し政府は、「復旧復興に限るという位置付けの中で、予見し難い事態があったときに緊急的に対応できるよう計上したものである」旨の説明があった。さらに、事実上、国会に白紙委任を求める予備費への多額の予算計上の問題点が指摘されたが、政府は、「憲法第87条に基づき、事後に国会の承認を得ることとしている」旨の答弁を繰り返し、両者の議論は平行線に終わった。

予備費は、憲法第87条により、予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基づいて設け、内閣の責任で支出することができるとしたもので、事後に国会の承諾を得なければならない。それゆえ、予備費は、具体的な内容について国会の承認を得たものではなく、財政処理についての国会事前議決の原則の例外となっている。計上できる金額について、法規上の制約はないものの、巨額の予備費の計上は、予備費制度の趣旨に反するとの指摘もある。予算総則で使途について一定の制限をかけているとはいえ、どの程度の規模までならば予備費として妥当なのか、国会事前議決の原則に照らし、更に詰めた議論が求められよう。


復興財源問題

政府は、平成23年7月29日、「東日本大震災からの復興の基本方針」を決定し、復興期間は10年間、特に復興需要が高まる最初の5年間を集中復興期間とし、復旧・復興事業費は、復興期間(10年間)で少なくとも23兆円、集中復興期間(5年間)で少なくとも19兆円と見込んだ。既に、23年度第1次補正予算で約4兆円、第2次補正予算で約2兆円の予算が計上されていたことから、第3次補正予算以降の事業費は13兆円程度となった。他方、財源については、「次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うことを基本」とし、一時的なつなぎとして復興債を発行するものの、その償還財源を含め、歳出の削減、政府保有株など国有財産の売却、特別会計の見直しや更なる税外収入のほか、時限的な税制措置で確保する方向が示された。こうした財源で賄う範囲は、当初、集中復興期間の事業費13兆円のほか、23年度第1次補正予算の財源に活用された年金臨時財源の補てん2.5兆円及びB型肝炎関係経費0.7兆円を加えた16.2兆円とされた。

その後、税外収入等で賄う財源は上積みされ、10月7日に閣議決定された「平成23年度第3次補正予算及び復興財源の基本的方針」(以下、「3次補正及び復興財源の基本的方針」という)では、5年間で5兆円程度の確保を前提とし臨時増税(11.2兆円)を行うが、更なる政府保有株の売却により10年間で7兆円の税外収入等を確保することにより、結果として増税額は9.2兆円になることが示された。なお、国会提出時の財源確保法案(復興経費だけに対応する内容とされB型肝炎関係経費分0.7兆円を除く)は、増税規模は5年間の集中復興期間の税外収入等5兆円程度を前提に10.5兆円(11.2兆円マイナス0.7兆円)とされ、これを復興債の償還期間10年に対応する形で、臨時増税(所得税、法人税、たばこ税等)により賄うという内容であった。

しかし、既に同法案の国会提出以前から、東日本大震災からの復旧復興は1000年に1回とも言われる大災害への対応であり、しかも公共事業も多く含まれることなどから、償還期間は建設国債の60年を検討すべきなどの指摘が行われていた。これに対し政府は、「復興の基本方針として、今を生きる世代によって連帯して負担を分かち合うという理念の下、歳出削減や税外収入をできるだけ充てながらも、時限的な税制措置により国民に負担をお願いすることとしており、その期間については10年を基本と考えている」旨の答弁を繰り返した。10月から11月にかけて、第3次補正予算の編成、国会審議等とほぼ並行して与野党協議が続けられ、その結果、復興債の償還期間は25年に延長され、併せて所得税の増税期間も25年とされた。また、たばこ税の増税は見送られ、その分、所得税と個人住民税の負担を増やすことになった(民自公の3党合意)。


本格的な復興に対応した第3次補正予算

野田内閣は平成23年9月2日に発足し、21年秋の政権交代以降、3人目の総理となった野田総理は、自らの内閣の目標について、「当面の最大かつ最優先の課題は、東日本大震災からの復興と原発事故の収束、そして経済の再生であり、これらの困難を乗り越えた後には、分厚い中間層をつくり、その中間層を支える持続可能な社会保障制度と税制の構築に取り組んでいきたい」旨の考えを示した。

野田内閣が初めて編成する平成23年度第3次補正予算は、「3次補正及び復興財源の基本的方針」を受け行われた与野党協議を経て10月21日に閣議決定され、同月28日に国会に提出、11月21日に成立した。その主な内容は、(1)東日本大震災関係経費11兆7,335億円(災害復旧公共事業費、災害廃棄物処理事業費、災害関連融資関係経費、東日本大震災復興交付金、原子力災害復興関係経費、立地補助金、雇用対策費、年金臨時財源の補てん等)、(2)その他の経費3,210億円(台風12号等に係る災害対策費等)、(3)B型肝炎関係経費480億円となっている。この中には、23年夏以降一段と顕著になった円高に対処するため2兆円程度の円高対策(立地補助金、雇用対策費等)が含まれている。

本補正予算では、経費ごとに財源が対応する形になっており、(1)東日本大震災関係経費は、復興債の発行11兆5,500億円のほか、子ども手当の見直し等の歳出削減などにより、(2)その他の経費は、独法国庫納付金、前年度剰余金等のほか、東日本大震災復旧・復興予備費の減額などにより、そして(3)B型肝炎関係経費は、中央職業能力開発協会からの返納金や年金特会業務勘定繰入の減額などにより捻出されることとなっている。

これらにより3次補正後の予算総額は、2次補正後より11兆6,832億円増加し106兆3,987億円となり、過去最高の予算規模となった。

23年度第3次補正予算では、東日本大震災復興経費(年金臨時財源補てん分を除く)として約9兆円が計上され、23年度第3次補正予算以降の集中復興期間(5年間)の事業費約13兆円を前提とすれば、今後約4年間の事業費は4兆円程度となる。野田総理は「復興事業の見込額は増えていく可能性が十分にある。安易に国民に負担をお願いするのではなく、歳出の無駄削減や税外収入の確保を懸命にやりぬき、財源を確保するのが基本である」旨述べている。現在の見込額で復興事業費が全て賄えるのかどうか疑問視する見方は多く、追加財源の問題もあり、今後の復興事業の行方が注目される。


不透明感増す経済動向

東日本大震災の被害は巨額に上り、平成23年3月の政府(内閣府)の推計では、社会資本・住宅・民間企業設備といったストックへの直接的被害額が約16〜25兆円(内閣府の6月推計では16.9兆円)に上った。震災の経済の影響について、震災直後の段階で政府からは、「日本経済は全体としては健全性を維持しており、阪神・淡路大震災を例に考えても、それほど大きなマイナス成長にはならない。但し、電力供給に影響が出ており、電力不足は日本経済にとって深刻な問題になると考えている」旨の考えが示された。

その後、日本経済は、震災によるサプライチェーンの断絶、電力供給の制約、原発事故の影響、消費者マインドの低下などにより、生産、輸出が大きく落ち込むほか、消費、設備投資にも弱い動きがみられたが、次第に持ち直しの動きが出てきた。他方、夏頃より、欧州の債務問題、米国経済の減速などを背景に円高傾向が一段と顕著になった。こうした円高の経済への影響について、政府・日銀からは「円高は輸入コスト低下のメリットがある一方、輸出の減少などマイナスの効果もある。加えて、中長期的には、日本の震災リスク、電力供給の不確実性等が増加する中、企業が円高を意識して海外に生産をシフトさせるなどのマイナス面もあり、こうした円高の影響を注視しながら、適切な措置を講じていきたい」旨の考えが示された。この間、円高対策(雇用調整助成金の要件緩和、中小企業金融の拡充、円高メリット活用策等)・金融緩和の強化等が講じられてきたが、円レートは夏から秋にかけて、概ね1ドル75〜76円台と史上最高値の水準が続いた。こうした中、政府は、23年10月31日に、同年3月、8月に続き3回目の市場介入に踏み切ったが、その後も総じて円高水準が続いている。

日本経済は、震災から持ち直しの動きを見せてきたものの、海外経済の鈍化、円高水準の高止まりなどから、先行き不透明感が増してきている。民間シンクタンクの経済見通しでは、23年度はほぼゼロ成長を見込むところが多く、先行きについては、特に海外経済の下振れリスクを懸念する機関が目立っている。財政再建とも密接に関係する今後の経済の行方が注目される。


TPP問題

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は、サービス貿易、政府調達を含む包括的協定であり、物品貿易については原則、全品目の即時または段階的関税の撤廃が求められるもので、22年10月、当時の菅総理はTPP交渉への参加に意欲を表明した。その後、東日本大震災により、農業、漁業に甚大な被害が生じたことなどに鑑み、当初23年6月としていたTPP交渉参加についての態度表明は見送られたが、9月の野田政権発足後まもなく、野田総理はTPP交渉参加について、できるだけ早期に結論を出すとの方針を示した。

その後、総理は、23年11月のAPEC首脳会議において、TPP交渉参加についての態度表明を行う意向が伝えられ、国会でも議論が活発化した。APECからの帰国後、総理からは、「APECにおいて、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る方針を説明した。国益を最大限実現するとの視点で協議に臨んでいく所存であり、今後、農業をはじめ国民生活に与える影響について議論し、必要な対策を講じてまいりたい」旨の考えが示された。

TPP交渉参加について、なお推進派と慎重派が激しく対立する中、今後、国内対策に必要な予算計上の可能性も報じられており、これからの協議の行方等が注目される。


おわりに

平成23年度においては、東日本大震災からの復旧復興等を図るため、累次にわたって補正予算が編成され、第3次補正予算では、その規模は約12兆円に上った。補正予算の規模が10兆円を超えるのはまれで、リーマンショック後の不況に対応した21年度第1次補正予算(約15兆円)に次ぐ大型の補正予算となった。予算審議等では、既に危機的な財政状況の下、巨額の復興財源をいかに調達するかが議論の大きな焦点であった。こうした中、通常の建設国債や特例国債とは別に、使途を東日本大震災関係費に限定し、かつ一定の償還財源を確保する「復興債」が発行されることとなった。かつて、関東大震災の際には、国内が資金不足の中、使途を震災対策関係に限定した「震災善後公債」及び「震災外債」が発行されたが、中でもこの震災外債の発行条件は高い利回りを強いられ、我が国とって不利なものになったと言われる。

今後、大震災、円高、海外経済の不安定化などで、我が国を取り巻く状況は更に厳しさを増す可能性がある。加えて、現在の国内の資金余剰の状況も、中長期的には転換点を迎えるとの見方が多く、国債金利の行方も予断を許さない。震災からの復旧復興、社会保障など財政需要に対応する一方、一定の経済成長を確保しつつ、債務残高1000兆円を超える国の財政の健全化をいかに実現していくのか。政府にとっては、極めて難しい政策運営が求められている。

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(−困難さを増した財政健全化− 平成24年4月5日成立 24年度予算審議)

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(−21年度第2次補正予算と22年度当初予算の審議を振り返って− 平成22年1月28日成立 平成21年度第2次補正予算 平成22年3月24日 成立 平成22年度予算)

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