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HOME > ニュース&ダイジェスト 法令 > 法案の解説と国会審議 > 「IT社会における個人情報保護への第一歩」

法案の解説と国会審議

IT社会における個人情報保護への第一歩

−個人情報保護関連5法の成立−

平成15年5月30日公布 法律第57号

著者:寺西 香澄

法案提出の背景・経緯
 情報通信技術の発達と世界規模でのその活用は、社会に多くの変化とメリットをもたらしたが、他方で、プライバシー保護や、個人情報の流出・漏えい防止への対応が課題となった。
 我が国では、昭和63年に「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」(以下「旧行政機関法」という。)が制定されたが、平成11年の住民基本台帳法改正案の審査では、民間部門における個人情報保護の必要性も強く認識されたことから、政府は平成13年に、基本法的内容と民間事業者への規制を含む「個人情報の保護に関する法律案」(以下「旧法案」という。)を提出した。また、平成14年には、旧行政機関法の全面改正案(以下「新行政機関法」という。)のほか、新たに独立行政法人等を対象とする法案等を提出した。
 これらの個人情報保護関連法案は、平成14年の通常国会から一括して審査が開始されたが、表現の自由への制約となることや、官に甘い法体系であること等が強く批判され、同年12月に廃案となった。与党3党は指摘された批判を受けて修正要綱をまとめ、政府は当該要綱に沿って一部修正した法案を平成15年の通常国会に改めて提出した。
 以下では、主に「個人情報の保護に関する法律」について述べる。

法案の主な内容
基本理念
 旧法案では、OECDの「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドライン」(昭和55年採択)を踏まえた5つの基本原則を定めていたが、これは個人情報を取り扱うすべての者に適用されるものであったため、報道機関等から、表現の自由が制約されるとして厳しい批判を受けた。平成15年に改めて提出された法案では、基本原則を削除し、個人情報の適正な取扱いが図られなければならないことを基本理念として定めた。

個人情報取扱事業者の義務
 利用目的の制限、第三者提供の制限、開示、訂正、利用停止などを個人情報取扱事業者の義務として定めた。当該個人情報取扱事業者の主務大臣は、必要な限度において、事業者に対し、個人情報の取扱いに関する報告の徴収、助言、違反是正のための勧告及び命令を行うことができる。

適用除外
 報道機関(個人を含む)、著述業者、学術研究機関等、宗教団体及び政治団体がそれぞれ一定の目的により個人情報を取り扱う場合には、個人情報取扱事業者の義務規定を適用しない。なお、報道について、「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること(これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。)」との定義を置いた。

新行政機関法等
 新行政機関法では、個人情報の範囲をコンピュータ処理情報以外にも拡大したほか、新たに訂正請求・利用停止請求制度を定めた。また、平成14年に明らかになった防衛庁における情報公開請求者リスト作成問題により、行政機関における個人情報の取扱いへの不安が広がったことから、平成15年に改めて提出された法案では、新たに罰則を設けた。また、独立行政法人等についても新行政機関法とほぼ同様の規定を設けた。

国会における論議
自己情報コントロール権の明記
 自己情報コントロール権とは、自己に関する情報の流れをコントロールする個人の権利であり、積極的・能動的要素を含むプライバシー概念の1つであるが、本法律ではこの権利を明記していない。政府は、目的規定にある「個人の権利利益」にプライバシーを始めとする権利利益が含まれており、自己情報コントロール権という文言はないが、本人からの開示、訂正、利用停止請求の制度を盛り込むなど本人関与について具体的に規定していると説明している。

センシティブ情報の取扱い禁止
 センシティブ情報とは、人種、民族、宗教的・思想的信条、政治的見解、保健医療などといった、一般的に他人に公開されることを望まない、特に慎重な取扱いが求められる情報を指すが、本法律では、個人情報の性質による特別の取扱いは規定していない。政府は、センシティブ情報を明確に定義することは非常に難しく、必要に応じて個別の施策ごとにきめ細かく措置することが適当であると説明している。なお、医療、金融・信用、情報通信等、高いレベルでの個人情報保護が求められる分野については、個別法の早急な検討を行うこととする附帯決議が、両院の個人情報の保護に関する特別委員会で行われた。

個人情報取扱事業者の範囲
 本法律では個人情報取扱事業者を「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義し、事業の営利・非営利を問わないこととしている。そのため、カーナビや年賀状ソフトの利用者も個人情報取扱事業者となる可能性が指摘された。政府は、反復継続し、社会的に事業と認められるものを行う者に対して義務を課すものと説明している。

主務大臣制の是非
 主務大臣が個人情報取扱事業者に関与する場合、業態の多様化により事業区分が難しいことや、複数の主務大臣が存在する場合に統一した対応がとられない可能性があることから、独立した第三者機関による監視が必要との議論がなされた。政府は、我が国行政庁の対応実績からも、各事業所管大臣が個人情報保護事務も一体的に行うことが合理的かつ実効的であるとし、関与の統一性については、相互に連携をとるため内閣府に各省連絡会議を置くと説明している。また、政府は、本法律は事業者の自主的な取組を基本としており、主務大臣は、当事者間で解決できないような、社会的に問題となる個人情報の取扱いを行った場合に対応するものであって、個人情報取扱事業者に該当することで直ちに行政が関与するおそれはないと説明している。

適用除外範囲
 事業者の義務規定の適用除外対象である報道機関の例示に出版社が明記されなかった。政府は、出版社の事業は、名簿や住宅地図等の出版を除き、おおむね報道か著述に該当し、ほとんど適用除外となることから、例示としては明記しなかったと説明している。
報道の定義 定義を置くことについて、報道の概念を狭くとらえたとの批判があったが、政府は、旧法案審査の際、報道の範囲が恣意的に判断される可能性を指摘されたことから、適用除外の趣旨を明確にするため、客観的基準としての定義を置いたと説明している。

新行政機関法等
 新行政機関法に対しては、不服申立てにおける訴訟管轄の特例の必要性、罰則規定の実効性、住民基本台帳の基本4情報原則公開の見直し等についての議論があった。その他、防衛庁による適齢者情報の収集についても議論があった。

今後の課題
 まず、本法律による民間事業者規制により、本人の望まない個人情報流通を防止できるのか、法律の実効性を検証しなければならない。同時に、より厳重な保護が求められる医療、金融・信用、情報通信分野の個別法の要否を早急に判断することも必要となる。また、情報セキュリティ対策の確立が、官民を問わず重要な課題となるだろう。

<関連法令>
・平成15年5月30日 法律58号
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 (総務省)
・平成15年5月30日 法律59号
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律 (総務省)
・平成15年5月30日 法律60号
 情報公開・個人情報保護審査会設置法 (総務省)
・平成15年5月30日 法律61号
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 (総務省)
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