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HOME > ニュース&ダイジェスト 法令 > 法案の解説と国会審議 > 「公共事業等の官製談合防止に向けた取組」

法案の解説と国会審議

公共事業等の官製談合防止に向けた取組

−入札談合等関与行為排除及び防止法の成立−

平成14年7月31日公布 法律第101号

著者:奥井 俊二

法律案提出の背景
 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」という)は、例えば2以上の事業者によって価格を不当につり上げるカルテル行為など、事業者による不当な取引制限を禁止している。
 入札談合は、こうした不当な取引制限に該当する不正行為の1つであり、入札談合に関わった事業者は独占禁止法違反として課徴金や刑事罰の対象とされる他、刑法の談合罪や偽計入札妨害罪に問われる可能性もある。
 国や地方公共団体等では、入札談合を防止するためにこれまで様々な取組が行われている。例えば、公正取引委員会は、入札に係るどのような行為が独占禁止法上問題となるのか具体例を列挙した指針を公表し、また、多くの地方公共団体等は、公共工事や役所への物品納入等にあたって一般競争入札を導入したり現場説明会を廃止する等、入札談合を防止するために取組んでいる。
 しかし一方で、こうした入札談合を防止するための取組とは正反対に、公共工事等の発注者側である国又は地方公共団体等が、本命業者を教示したり、あるいは予定価格を事前に漏らすなど、自ら積極的に入札談合に関与するケースが、近年報道等でもよく採り上げられている。これが、いわゆる「官製談合」である。
 この官製談合について、社会的な批判が高まった契機となったのが、平成12年5月の北海道上川支庁発注の農業土木工事談合事件である。同事件では、上川支庁側が受注業者に関する意向を示していた等の事実が認められ、公正取引委員会が北海道庁に対して改善要請を行った。
 しかし、その後も多くの地方公共団体等で予定価格の漏洩等の官製談合疑惑が後を絶たない状況にある。また、官製談合の罰則について、受注者側の事業者が前述したように課徴金や刑事罰を受ける可能性がある一方、発注者側の国や地方公共団体等に対する制裁措置がないため、官製談合に対する抑止力が働かない等の批判がある。
 こうしたことから、発注者側を規制し官製談合を排除・防止するための新たな立法化の機運が高まり、与党3党による議員立法として本法律案が第154回国会に提出された。

法律の概要
 本法の正式名称は、「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」である。
 本法は、国、地方公共団体及びこれらが2分の1以上出資している法人を対象に、発注者側が<1>談合を明示的に指示する、<2>受注者に関する意向を表明する、<3>発注に係る秘密情報を漏洩することの3類型を「入札談合等関与行為」(官製談合)として禁止している。
 また、公正取引委員会が民間事業者の入札談合を調査した結果、入札談合等関与行為があると認められるときは、発注者側に対し官製談合を排除するための必要な改善措置を要求できることとし、この要求を受けた発注者側は、自ら事実関係を調査し、規則の見直しや情報管理の徹底など必要な改善措置を講じなければならないとされている。
 さらに、発注者側は、入札談合等関与行為を行った職員に対して賠償責任の有無等を調査し、故意・重過失がある場合には、速やかに損害賠償を求めるとともに、当該職員の行為が懲戒事由に該当するか否かについて調査しなければならず、また、これらの調査を行うにあたっては、その適正を確保するため、指定する職員に調査を実施させることを併せて規定している。
 なお、本法の運用に当たっては、地方公共団体等の自主的な努力に十分配慮することとされている。

国会審議の概要
 衆議院の経済産業委員会においては、第153回国会に提出されて継続審査となっていた民主党案(法案名は本法と同じ。与党案との主な相違点は、<1>事業者による談合等を地方公共団体等の担当者等が知りながら防止措置を講じない「不作為」を入札談合等関与行為と規定、<2>損害賠償請求の要件を故意又は過失と規定、<3>公正取引委員会と会計検査院との連携強化を規定)と一括審議され、民主党案は賛成少数で否決され、与党案は委員会及び本会議において全会一致で可決された。参議院の経済産業委員会においては与党案が審議され、委員会及び本会議において全会一致で可決された。
 衆参両院の委員会においては、本法制定の意義、入札談合等関与行為の範囲、職員への損害賠償請求の在り方、入札談合防止への取組等、広範多岐にわたり質疑が行われた。
 まず、本法制定の意義についての質疑に対しては、「官製談合等に見られる組織を規制する法律を新たに制定することにより、入札談合等関与行為に対する考え方が変わってくることを期待したい」旨答弁している。
 入札談合等関与行為の範囲に不作為を含めるべきとの質疑に対しては、「与党内でも再三にわたって議論したが、風評まで含めて談合情報には様々なものが考えられ、不作為か否かをどう認定するのか非常に難しい。法律を作る以上あいまいさがあってはならず、現段階で不作為を対象に含めることは困難であり今後の検討課題である」との趣旨の答弁を行っている。
 職員への損害賠償請求の要件を「故意又は重過失」ではなく「故意又は過失」とすべきとの質疑に対しては、「執行する職員の立場に立ったとき、自信を持って萎縮せずにその業務に当たることができるかどうかが懸念され、過失と規定することには問題がある」旨答弁している。
 さらに、<1>地方公共団体における入札監査機能の強化、<2>公正取引委員会の審査体制の強化、<3>第三者機関による調査の必要性、<4>内部告白者の保護的措置などの入札談合防止に向けての対応についても質疑応答がなされている。

今後の課題等
 平成15年1月、公正取引委員会は北海道岩見沢市発注の公共工事について、市側が本命の受注業者名や予定価格に近い金額を業界団体に伝えていたとして、同月施行されたばかりの本法を初適用し、同市に改善要求を行った。
 業界団体にも文書で再発防止を要請し、会計検査院にも通知した。現在、同市の内部調査委員会が報告を取りまとめ中であるが、官製談合の実態がどこまで解明されるのか、同市が内部規則等をどのように見直すのか、また、公正取引委員会にどう報告するのか、今後の本法の運用にも影響を与えるものとして注目されている。
 また、国や多くの地方公共団体において、本法の周知徹底を図るため職員に対してセミナー開催や解説書の配布が行われているとも報じられている。こうした動きが発注者側の意識改革につながり、結果として官製談合の防止に大きな成果をもたらすことが期待されている。

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