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法案の解説と国会審議

抜本的税制改革を目指して

―所得税法等の一部改正―

平成15年3月31日公布 法律第8号

著者:金子 隆昭

 所得税法等の一部を改正する法律案(第156回国会閣法第9号)は、3月28日に平成15年度予算とともに参議院本会議において可決・成立した。本法律案は、配偶者特別控除の配偶者控除への上乗せ部分の廃止、試験研究費の総額税額控除措置の導入、消費税の中小企業者特例の縮小及び総額表示の義務化、相続税・贈与税の一体化、酒税・たばこ税の引き上げなど広範多岐にわたる改正を含むもので、今後の国民生活や企業経営に大きな影響を与えるものとなっている。

広範多岐にわたる改正内容
 今回の税制改正に向けた取り組みは、昨年1月、異例とも言うべき、平成14年度税制改正関連法案の国会審議開始前から、政府税制調査会、経済財政諮問会議などにおいて開始された。特に、度重なる減税等を背景にした税収の低迷による税の空洞化と、近時の我が国経済の低迷を背景にした経済活性化に向けた減税の必要性とを、いかに調和するかが課題とされた。本法律案は、こうした議論を経て、あるべき税制の構築の一環として、各税目について多様な改正を行う一方で、現下の経済情勢を踏まえ、その実施時期を調整することにより、全体として減税を先行させる政策減税を実施することとしたものである。その改正内容に目を向けると、所得税法を始め、税法13法の改正を行う非常に大きな改正となっており、改正内容は広範多岐にわたっている。
 まず、増税の方向での改正について目を向けると、所得税の配偶者特別控除のうち、配偶者控除に上乗せする部分について、平成16年から廃止することとしている。これにより、夫婦と子ども2人の4人世帯の場合、384万2000円の課税最低限が、325万円に引き下げられることとなる。
 次に、消費税のいわゆる中小企業者に対する特例については、平成16年度から、売上高の一定割合を仕入額とみなす「みなし仕入税額控除」を認める簡易課税制度及び一定規模以下の業者に対して消費税を非課税とする免税点制度に関して、適用上限が課税売上高5000万円(現行2億円)、1000万円(現行3000万円)に、それぞれ引き下げられる。なお、消費税に関しては、総額表示方式の義務化も行われる。
 さらに、本年5月より酒税が、また7月よりたばこ税が、それぞれ引き上げられることとなっている。
 一方、減税に関しては、まず相続税・贈与税関係では、いわゆる相続税・贈与税の一体化の観点から相続時精算課税制度が導入されるとともに、相続税・贈与税の累進性の緩和が行われる。
 相続時精算課税制度は、65歳以上の親から20歳以上の子供に対してなされる生前贈与に関し、選択で適用されるものである。具体的には、2500万円の非課税枠を設け、非課税枠を超える部分については20%の税率で贈与税課税を行った上で、改めて相続時に相続税と精算を行うものである。さらに、住宅用資金については、非課税枠を3500万円に拡大する措置が、3年間の時限措置として設けられている。
 また、累進性の緩和については、所得税の最高税率との均衡への配慮などの観点から、それぞれ最高税率が70%から50%に引き下げられるとともに、税率階層とブラケット幅の簡素化が行われている。
 次に、企業関連税制では、従来の試験研究費の増額分に対する税額控除と選択制で試験研究費の総額に対する税額控除が新たに設けられる。また、設備投資減税としてはIT投資促進税制が創設されている。さらに、ベンチャー企業への投資額を株式譲渡益から控除できるようにするエンジェル税制の見直しなどの中小企業・ベンチャー支援税制の整備も行われている。
 金融・証券税制や土地・住宅税制についても、経済の活性化に向けた見直しが行われている。
 金融・証券税制では、上場株式等の配当及び譲渡益等について、源泉徴収のみで納税が完了する仕組み(申告不要制度)を導入するとともに、税率について15%(個人住民税を含め20%)に引き下げた上で、さらに5年間の措置として、7%(個人住民税を含め10%)の優遇税率を適用することとしている。また、土地・住宅税制では、登録免許税の軽減制度を大幅に見直している。具体的には、土地に係る課税標準の特例を廃止し、土地を含む不動産について、各種登記間の税率格差を是正した上で、軽減税率を導入することとしている。
 以上のほか、認定NPO法人に対するみなし寄附金制度導入、石油石炭税の石油税への見直しなどのエネルギー諸税の見直し、揮発油税等のいわゆる道路特定財源の暫定税率の5年間延長などの措置も講じられている。

多年度税収中立の実現可能性
 今年度の税制改正全体のスキームとして注目されたのが、多年度税収中立の考え方である。近時の税制改正においては、財政再建の観点から減税の実施に当たり、どのようにその財源としての税収を確保するかが課題となってきた。例えば、昨年度の連結納税制度の導入に当たっては、制度導入に伴う約8000億円の減収に対して、連結付加税を始めとする財源措置を講じることにより、単年度で増減収の均衡を図るよう措置が講じられてきた。これに対して、今回の改正に当たっては、現下の経済情勢を踏まえ、単年度で税収の均衡を図るのではなく、経済活性化に向けた減税を先行して実施し、後年度の増税によりその財源を確保することとしたのである。
 こうした多年度税収中立については、平成16年度以降の税制改正や景気動向等により、影響を受けうるものであり、どのような形でこれが実現されるかに関心が集まった。このうち、増減税の期間と規模などの具体的な税収中立の姿については、平成15年度約1兆8000億円、16年度約1兆5000億円、17年度約5000億円の3年間の先行減税期間を経て、18年度以降21年度までに、それぞれ8000億円、1兆2000億円、1兆2000億円、1兆1000億円の増税となることで7年間程度で税収の均衡を図られることが明らかとなった。
 その一方で、今回の税制改正の具体項目をみた場合には、所得税増税や酒税・たばこ税の引き上げなどの増税が、消費抑制的にはたらくのではないかとの指摘がなされ、現下の消費低迷への悪影響、さらには景気回復の遅れによる税収見通しへの悪影響の可能性も指摘された。加えて、こうした今回の税制改正の景気回復に向けた効果に関する疑念に対しては、景気低迷が続く場合には、来年度以降の税制改正においても、さらなる減税に関する検討が行われる可能性が政府側から示唆されるなど、減税の財源を確保することで財政悪化に歯止めをかけるという機能に関しても、疑問の余地が残るものとなった。
 景気の先行きに不透明感が残る中で、あるべき税制の姿を目指した抜本的な税制改革が実現するのか、それは、まさしく今後の税制改正の論議に委ねられていると言わねばならない。
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(−歳出抑制路線を継承した平成15年度予算− 平成15年3月28日公布 平成15年度予算)

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