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裁判員裁判における裁判官のあり方の変化(その2)

裁判員裁判の採用により裁判をする主体が変わりましたが、それと同時に、その裁判体によって行われる刑事裁判の訴訟手続に変化が生じています。これまで裁判官は検察官及び弁護人などの主として法律家を相手にして、裁判手続を進めてきました。従来から長年にわたって法曹界で使用されてきた言葉と積み上げられてきた慣行に従っていれば仕事をすることができました。

ところが、裁判員裁判ともなれば、9人をもって構成される裁判体に法律の素人である市民が裁判員として加わっています。裁判官は、彼らと訴訟の様々な段階において、そこで生じた法律問題を含む様々な問題について議論し、意見交換をしなくてはなりません。難しい専門用語をそのまま使用しただけでは、それを裁判員に理解してもらうことが困難です。裁判上の用語を平易な言葉に言い替えて使用する必要があります。また議論の仕方や話し方にも工夫をこらさなくてはなりません。つまり裁判官には一般市民の法常識のレベルに応じたコミュケーションの技法を身につけることが要請されているのです。

しかも無作為に選ばれた裁判員が市民としての日常生活から離れて長期間にわたりその職務のために拘束されることは、大きな負担となります。そこで、できるだけ短期間に集中して裁判の審理を行い、その結論を出すことが求められます。他方、裁判員の仕事は彼らにとり殆どが初めての経験ですから、その仕事に慣れるまでにある程度の時間をかけることも必要です。このように、ある意味では相反しているとも見られる要請を同時に実現することが求められているのです。いずれにしろ裁判員裁判における訴訟手続は、全体として法律の素人にも解りやすく、かつ簡明なものにすることが必要であるということです。

裁判員制度による刑事裁判の運営は、これまでにも増して裁判官に訴訟運営上の負担を与えることになります。そして裁判官のみならず検察官や弁護人も裁判員裁判に関与する関係者であり、その協力が不可欠です。現在、法曹界全体としても裁判員裁判に相応しい訴訟手続の改革への取り組みをしているところです。

(2009年12月執筆)

執筆者プロフィール

下澤悦夫(元裁判官)

1964年 東京大学法学部卒業

1966年 判事補に新任

1999年 現職裁判官団体である日本裁判官ネットワークの設立に参加
在任中は同ネットワークの会員(退官後はサポーターとして活動)

2006年 定年退官

職 歴  1966年4月8日札幌地裁判事補に新任
その後、東京家地裁、岐阜地家裁多治見支部、水戸地裁各判事補を歴任
1976年4月水戸地裁判事に再任
以後、山形家地裁、津地裁、名古屋家裁、名古屋地裁一宮支部、名古屋高裁各判事を歴任
2001年4月岐阜家裁判事に転任
2006年8月30日同家裁判事を定年退官

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